東洋経済、ダイヤモンド、エコノミスト...それぞれの「2023年予測」はどうなっている?

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

   3誌ともに年内最終の合併号で、来年2023年の経済・社会を予測する内容になっている。

【ダイヤモンド】業界天気予報では20業種中10業種が「晴れあるいは薄日」

   2022年12月19日発売の「週刊ダイヤモンド」(2022年12月24・31日号)の特集は、「総予測2023 株価・円安・物価・企業業績」。

   急激な円安、原料高、資源高のトリプルパンチが、日本企業の経営を圧迫している。2023年は、日本企業にこれらの外的な負荷を跳ね返すだけの真の競争力が求められる年になりそうだ、と位置づけている。

   20業種についての「天気予報2023」が興味深い。

   20業種中10業種について、業績が「晴れあるいは薄日」になると予想。外部環境が悪化しているわりにはポジティブな評価が目立つ。いくつかの業種の予報をピックアップしてみよう。

   「自動車」は「雨」予報。

   2023年にも米テスラの電気自動車「モデルY」が世界で最も売れる車になる公算が高まっている。実現すれば、単一モデルの量販車として初めて、電気自動車(EV)がガソリン車を抜くことになる。中国EV最大手のBYDも23年1月に日本上陸する。23年は「EV大衆化」元年になる、と予想している。

   トヨタ自動車を除く、日系6社は円安を追い風に22年度業績を上方修正した。だが、電動化の遅れに、部材費高騰や世界景気の腰折れなど、悪材料が山積みしている。

   完全な「晴れ」になっているのは「商社」だけだ。

   円安と資源高の影響で絶好調だ。特に、資源ビジネスの構成比の高い三菱商事と三井物産の利益伸長が著しい。「インフレと円安で稼げるうちに利益を何に投資し、資源バブルの終焉に備えるかが焦点になりそう」とコメントしている。

◆航空」や「鉄道」は需要と業績が回復

   「薄日」の業界も少なくない。コロナ禍で大打撃を食らった「航空」や「鉄道」は需要と業績の回復が進む。

   航空会社は非航空事業が焦点になる。最大の勝負どころは、マイル会員を囲い込んでいろいろな商品やサービスを提供する「ANA経済圏」「JAL経済圏」の構築と見ている。日常生活でもマイルをためて使える機会を広げ、「楽天経済圏」のような世界をめざす。

   鉄道は、23年春に運賃改定が行われる。

   最大の注目はJR東日本が導入を予定する「オフピーク定期券」だ。通勤ラッシュ時間帯以外にのみ利用できる定期券を割安にするもので、通常の定期券は値上がりする。ラッシュ時間帯の車両数や人員数を減らすことで、コスト削減につながる。

   ほかには、「銀行」「証券」「不動産」「通信」「旅行」の各業界も「薄日」になっている。一方、「曇り」と予報されているのが、「電機」「ゼネコン」「コンビニ」などだ。通して読むと、各業界のトレンドがわかる。この特集を読むだけでも値打ちがある。

   もう1つの目玉は「2022年ベスト経済書」特集だ。

   経済学者・経営学者・エコノミスト138人が選んだ。1位は渡辺努・東京大学大学院教授の「物価とは何か」(講談社)。物価を動かす要因や、日本経済がデフレを抜け出せなかった理由をわかりやすく説明している。

   2位は「中小企業金融の経済学」(日本経済新聞出版)、3位に「経済社会の学び方」(中央公論新社)と「スタートアップの経済学」(有斐閣)が並んだ。

   年末年始には、日頃手が伸びにくい、こうしたハードな経済書を読んでみてはどうだろうか。

【東洋経済】著名人の「スペシャルインタビュー」が充実

   「週刊東洋経済」(2022年12月24・31日号)の特集は、「2023年大予測」。108のテーマで世界・日本経済、産業のシナリオを追っている。

   国内外の主要スケジュールを冒頭でまとめており、便利だ。

   3月18日、「相鉄・東急直通線」が開通する。東急東横線・目黒線と相鉄線が相互直通運転を開始。渋谷や目黒から新横浜へ乗り換えなしで行けるようになる。

   関西では、うめきた地下駅(大阪駅)を含む地下線が2月13日から使用開始となる。関空特急「はるか」や和歌山方面行き特急「くろしお」が、大阪駅に停車するようになり、利便性が大きく向上する。

   地方都市では、福岡市地下鉄七隈線・天神南-博多間が3月27日に延伸開業。8月には栃木県宇都宮市に次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」が開業予定だ。

◆春以降のイベント予定は?

   4月には、黒田東彦日本銀行総裁の任期が満了する。次の総裁が日本の金融政策をどう舵取りするか注目される。4月には統一地方選挙も行われる。与党が大敗する事態になれば、「岸田降ろし」の動きが高まるだろう。

   そして5月には、8年ぶりの日本開催となるG7サミット。岸田首相の地元・広島での開催で、「核」が中心的話題になると思われる。ロシアや中国へどういったメッセージを提示できるかもポイントになりそうだ。

   9~10月には、ラグビーW杯がフランスで開催される。10月には消費税のインボイス制度が始まり、混乱も予想される。

   「業界天気図」「ベスト経済書・経営書」といった企画は、ライバルの「週刊ダイヤモンド」と共通している。

   充実しているのは著名人の「スペシャルインタビュー」だ。

   ノーベル賞受賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は「米国の金利は、すでに正常化している。米連邦準備理事会(FRB)の過度の利上げは世界金融危機を招く」と警告している。

   「物価とは何か」で注目された、渡辺努・東京大学大学院教授も「賃金が上がれば脱デフレのシナリオが実現する」との言葉に光明を感じた。

   世界政治・経済について、特集から気になる見出しをいくつか紹介しよう。

「ウクライナ戦争の今後」については「停戦へ両国歩み寄れず 核兵器使用の可能性も」
「中国と台湾」は「中国は経済発展を優先 台湾侵攻は可能性低い」
「北朝鮮」は「ミサイル発射を繰り返し 核戦力の完成度が高まる」
「世界経済の行方」は「浅い景気後退か大不況か 高インフレとのバトル」
「中国経済」は「ゼロコロナ政策解除で経済正常化へ動き出す」

   世界情勢を知るうえでも、この「新春合併特大号」は役に立ちそうだ。

【エコノミスト】インドなど新興国の存在感増す

   「週刊エコノミスト」(2022年12月27日・2023年1月3日号)の特集は、「世界経済総予測2023」。2023年は世界経済の構造が大きく変化する始まりの年になりそうだ、として巻頭でインドに注目している。

   国連の予測によれば、インドが23年、中国を抜いて人口で世界一になるという。インドは27年には日本を抜いてGDP(国内総生産)で世界3位となり、中国に代わり、インドが世界の成長センターに踊り出ると予測している。

   成長をけん引する産業の1つがITだ。ITは新しい産業だからカーストの制約はない、と優秀な人材が集まってきたことを原因に挙げている。

   インドは消費市場としても大きな注目を集めそうだ。25年には1人当たりGDPが耐久消費財の売れ行きが加速する3000ドルを超え、電力、道路、通信などインフラ整備が進むと期待される。

   このほか、ベトナムやバングラデシュ、エジプト、インドネシアなどが5%以上の成長が見込まれ、これら新興国がさらに存在感を増すというのだ。

◆「GAFAM」5社を分析

   「GAFAM」5社の優劣を分析した、山本康正・京都大学客員教授の寄稿にも注目した。

   世界のIT産業をけん引する米テック企業だが、苦戦のメタ、懸念材料を抱えるグーグルとアップル、堅実なアマゾンとマイクロソフト、と濃淡が分かれてきた、と指摘している。

   メタは本業の広告事業の不調に加え、ビジネスの転換先であるメタバース(インターネット上の仮想空間)もうまくいっておらず、株価はこの1年間で半減。このままいけば、ビッグテックから外される可能性があるという。グーグルはTikTokに押されていることやアップルは新発売の「iPhone14」の不調が懸念材料だ。

   政治コラム「東奔政走」で、平田崇浩・毎日新聞世論調査室長兼論説委員が「サミット解散か、花道退陣か 岸田首相が迎える勝負の半年」と書いているのも目を引いた。

   広島サミット直前の4月、黒田東彦日銀総裁の任期満了と統一地方選という2つの関門が岸田首相を待ち受けている。

   円安インフレに苦しむ国民が首相の日銀総裁人事をどう評価するのか、統一地方選で政権に厳しい評価が下れば、サミット花道退陣シナリオが現実味を帯びるという。

   2023年は「政治」の年になるかもしれないという予想に、驚いた。(渡辺淳悦)

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