日銀が外部の圧力に屈したとの印象を回避できるタイミング
「日本銀行は、異次元の金融緩和策が円安と物価上昇を招いているという国民からの批判をかわすために、このタイミングを狙っていたのではないか」といったトーンで指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「日銀がYCCの柔軟化策をサプライズ決定:依然として不確実性が高い共同声明・物価目標の修正議論の行方」(12月20日付)のなかで、折しも円高に修正されて、外部圧力に屈したとみられないタイミングに、サプライズ政策変更を行なったと推測している。
「今春以降、2%の物価安定目標に強くこだわる日本銀行の金融緩和姿勢が、物価上昇圧力を高める悪い円安を助長しているとして、その政策を修正すべきとの批判が企業、家計などから高まっていた。黒田総裁はそれを強く拒否し、為替政策への影響を意図した政策変更を強く否定してきた。
ただし、足元では円安傾向が一巡し、そのような批判が沈静化してきたこのタイミングで、日本銀行が外部からの批判を受け入れたかのようなYCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作)の修正を決めたのは非常に驚きである。
背景には、円安が一巡し、批判が沈静化してきたこのタイミングだからこそ、YCCの修正を行っても、日本銀行が外部からの圧力に屈したとの印象を回避できると考えたのではないか」
もう1つ木内氏が指摘するのは、来年(2023年)4月に交代する次期日本銀行総裁の新体制への配慮だ。
「今回の措置は、YCCの修正に強く反対してきた黒田総裁が、新体制に一定程度の配慮を示し、政策移行を多少なりともスムーズにするために柔軟化姿勢に転じたことも意味するように思われる。この点から、今回の措置は新総裁下での政策の柔軟化を先取りしたもの、と解釈できるのではないか」