年末年始の慌ただしい時季を迎え、労働災害が危惧されている。なかでも、建設業は労働災害が発生しやすい業種の一つだ。
厚生労働省によると、2022年1月1日~10月31日までに発生した労働災害(11月速報値)のうち、死亡災害は全体の死亡者数で589人(前年同期比24人、3.9%の減少)だった。
このうち建設業は216人で、同4人、1.9%増えた。また、休業4日以上の死傷者数をみると、全体の死傷者数は18万3298人で前年同期比7万2388人、65.3%の増加。このうち、建設業は1万2777人で、同717人、5.9%も増えている(11月16日発表)。
そうしたなか、労災センター共済会(東京都江東区)が、104人の建設工事の施工管理担当者を対象に、建設業者が労働者を使わずに自分自身だけで仕事こなす、いわゆる「一人親方」の労災保険加入に関する「施工管理担当者の意識調査」を実施。12月9日に、その結果を発表した。
工事現場で起こりやすい労災は「墜落」「建設機械」「倒壊」
もともと、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われ、人手不足が深刻化する建設現場。そこでは、「三大災害」といわれる「墜落・転落災害」「建設機械・クレーンなどの災害」「倒壊・崩壊災害」が、多く発生している。
たとえば、高所作業などの危険作業が多いこともあって、墜落(屋根や屋上からの墜落)による死亡災害の発生が多いほか、頭部外傷や骨折などで重篤な後遺障害が残るケースも少なくない。 建設業労働災害防止協会の調べによると、「三大災害」の割合は、全体の69.4%を占め、その中でも一番多いのは「墜落・転落災害」で全体の39.1%を占めるという。
墜落・転落災害の原因は「手すりの設置が不十分」「足場の固定が完全に行われていなかった」「安全帯を使用していなかった」などの基本的な措置が行われていなかったために起こっているそうだ。
建設現場では重大な事故につながるケースが少なくないことから、年の瀬を迎えて、厚生労働省や労働基準監督署などが注意を呼びかけている。
建設業の労災保険は、基本的には、その事業の元請けの事業主が加入することになっている。つまり、労災が起こった場合には、元請け会社の労災保険を使用することになる。
ただし、例外として、下請け会社の役員や事業主、「一人親方」などは、労働者には当たらないことを理由に、通常の労災保険とは異なる「特別加入」といわれる制度で別途加入しておく必要がある。もちろん、労働災害に健康保険は使えない。