産経と日経「増税は理解できるが、国民に丁寧な説明を」
もっとも、新聞は一様に、増税に反対しているわけではない。
産経新聞主張(社説)(12月18日付)「税制改正大綱 懸案の先送りは無責任だ」は、防衛増税をめぐり、法人税とたばこ税の引き上げや、復興特別所得税の延長を決めるなど、「必要な防衛財源の確保に向け、具体的な内容を決めたのは前進」といえると評価した。
しかし、「自民党内の強い反発を受け、実際の導入時期を明記しなかったのは問題である」と批判した。
《自民、公明両党による令和5年度の与党税制改正大綱は、防衛費増額に充てる防衛増税の導入時期の決定に加え、格差是正に向けた所得課税やエコカー減税の見直しなど、主要な懸案を軒並み先送りした。
改革の検討項目をただ並べるのが改正大綱ではない。どのような課題があるかを示したうえで、明確な処方箋を決めなければならない。それだけに今回の大綱は、与えられた責任を果たしたとはいえない内容となった。
日本の財政事情は厳しく、今後も少子高齢化や防衛、脱炭素などで財政需要は膨らむ。一方で経済の活性化も喫緊の課題である。政府・与党は、今こそ大胆な税制改革が求められていることを忘れてはならない。》
日本経済新聞社説(12月16日付)「防衛力強化の効率的実行と説明を」は、「足りない財源を増税で賄うのはやむを得ない」という立場だが、「国民の理解を得ながら丁寧に進めてもらいたい」と注文した。
《与党税制改正大綱は防衛費増額に対応する法人、所得、たばこ各税の増税措置を示した。だが、実施は「2024年度以降の適切な時期」と曖昧にとどめ、次の通常国会への関連法案の提出も見送る。
どうしても足りない財源を増税で賄うのはやむを得ない。首相は予算規模と財源措置を年内に一体で決着させる意向だった。増税方針への与党の反発で先送りを迫られ、不透明さが残る。
わたしたちは防衛力強化の議論は国民の理解を得ながら丁寧に進めてもらいたいと主張してきた。にもかかわらず、その中身の大半が明らかになったのは12月に入ってからである。増税方針も含め、拙速感は否めない。
歴史的な安保政策の転換だけに、政府は今後の国会審議などで野党の意見に真摯に耳を傾け、建設的な議論をすることで国民の幅広い支持を得る努力をすべきだ。》
(福田和郎)