来春(2023年)卒の大学生・大学院生の就職活動は、いよいよゴールが近づいてきた。
リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」が2022年12月15日、2023年卒大学生・大学院生を対象にした就活状況を調べた「2022年12月1日時点 内定状況」を発表したが、12月1日時点で内定率、進路確定率ともに9割を超えた。
内定者が進路の確定で一番重視したのは、会社の安定性・福利厚生よりも「自分の成長が期待できる」だった。
内定取得先&就職確定先企業の業種、ダントツで高いのはIT
就職みらい研究所によると、12月1日時点の就職内定率(大学院生を除く)は94.0%で、昨年(2022年卒対象)の同じ時点の95.2%より1.2ポイント少ない【図表1】。理系が95.7%と、文系の93.3%を2.4ポイント上回っている。また、女性(95.8%)のほうが男性(92.3%)よりも内定率がやや高いことが目につく。
内定取得先の業種をみると、情報・通信業が26.3%と、ダントツに高いことが特徴だ【図表2】。ITスキルを持つ人材は、世界的に奪い合いが激しく、優秀な学生は早くから海外からも誘いの手が伸びる。スタートダッシュの速さが、そのままゴールまで続いたかたちだ。
次いで、製造業(機械器具以外、15.4%)、サービス業(15.3%)、機械器具製造業(13.7%)、小売業(12.4%)、金融・保険業(12.1%)と続く。製造業やサービス業関連は、コロナ禍がひと段落したことで、業績が上向いている企業が多いことを反映しているようだ【再び図表2】。
一方、すでに就職先の企業を決めた進路確定率も9割超の91.6%と、就職活動がゴール間近に入ったことがうかがえる【図表3】。こちらは昨年の同時点(90.3%)よりやや高い。
就職確定先企業の業種をみると、やはり情報・通信業が23.4%とダントツに高い。次いで製造業(機械器具以外、12.4%)、機械器具製造業(10.0%)、サービス業(9.9%)、金融・保険業(9.1%)と続く【図表4】。
進路確定の決め手トップは「自分の成長が期待できる」
調査では、進路確定者に就職先を確定する際に決め手となった項目を聞いている(複数回答)。最も多かったのは「自分の成長が期待できる」(47.7%)だ。
次いで「福利厚生や手当が充実している」(43.5%)、「会社や業界に安定性がある」(39.5%)、「希望する地域で働ける」(37.8%)、「会社・団体で働く人が自分に合っている」(32.3%)、「会社や業界の成長性がある」(47.7%)と続いた【図表5】。
近年、転職を前提に就職先選びをする若者が増えており、次のステップに進むときを考えると、「自分を成長させてくれる」ことは重要なポイントのようだ。
また、進路確定者に就職活動で苦労したことを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「エントリーシート提出。締め切りがいくつも重なっており、スケジュール管理が何より大変で、夜を徹してエントリーシートを書きまくっていた」(文系・女性)
「エントリーシートの項目が企業によって異なるため、1社提出するために多くの時間を要した。その結果、エントリーを諦めざるを得ない企業もいくつか生まれてしまった」(文系・男性)
「Webでの面接の際、WiFiが繋がらないなどトラブルが発生し、焦ったことがありました。また、自分の思いが伝わっているのか不安でした」(文系・女性)
「Webでの面接よりも対面での面接のほうが緊張した。特に、面接で話すことだけでなく、身だしなみや礼儀など意識することが多く、苦労した」(文系・女性)
また、企業選びや面接の準備のために必要とされる「自己分析」についてもこんな悩みが聞かれた。
「自己分析の深掘りは、初めて自分としっかり向き合う機会だったので、大変苦労した」(理系・女性)
「自己分析は、自分のいいところよりだめなところばかりが出て、アピールポイントを探すのが大変だった。他己分析をしてもらい、自分の良いところや、人から見た自分を知ることができた」(理系・女性)
何より苦労したのは企業の情報収集だったようだ。
「企業研究を進めようと思ったが、ネット上の情報だけではその企業像が見えず、なぜその業界?という問いには答えられても、なぜうちなのか?という問いにうまく答えられなかった」(文系・男性)
「企業側や就職サービスが開示する情報が少なく、企業分析には不足していた。また、インターネットやSNSで収集した情報との乖離があった」(文系・男性)
「情報収集の仕方が全くわからず就職活動のスタートが遅れたこと。全ての業 界、職種を知ろうとしすぎてパンクしそうになったことがある」(文系・女性)
企業への期待、「就職活動スケジュール過密化」の改善を
今回の調査結果について、就職みらい研究所の栗田貴祥所長は、こうコメントをしている。
「就職先を確定する際に決め手となった項目を聞くと、『自らの成長が期待できる』が最も高い結果となりましたが、前年に比べ、2番目に高い『福利厚生や手当が充実している』との差が縮まりました。また、最も決め手となった項目についても、最も高い『自らの成長が期待できる』と、2番目に高い『希望する地域で働ける』との差が前年に比べ小さくなりました。成長への期待が最も高い傾向は変わりませんが、学生自身にとっての働きやすさを重視する傾向が強まっていることがうかがえます」
と分析。また、就職活動で苦労したことに関連して、
「学生からは、エントリーシート提出の締め切り集中や、企業によって異なる項目への対応が大変だったという声や、面接で対面・Webの両方への対応に関する苦労の声が挙がりました。就職活動スケジュールの過密化や、面接実施方法のハイブリッド化への適応に関する課題、学生が得たい情報と企業が発信している情報にギャップがある様子がうかがえます。企業の皆さまには、採用活動の振り返りの参考にしていただければと思います」
と企業に対して、選考方法の改善を求めている。
調査は2022年12月1日~5日、2023年卒業予定の大学生・大学院生で、リクルートが運営する就活支援サイト「リクナビ」のモニターに登録した大学生6254人、大学院生1372人の合計7626人を対象に行なった。(福田和郎)