円安、物価高騰、固定金利上昇...気になる2023年「住宅流通」市場の行方は?...専門家が解説(中山登志朗)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

世界情勢の変化が、どのように金利に影響するかに注目

   このなかで、憂慮すべきは、長期金利の上昇傾向です。

   2021年末に0.045%で推移していた長期金利は、2022年初に0.1%台に上昇。その後は、0.2%前半で推移して、6月以降は0.25%超に達しました。徐々に、イールドカーブコントロールが効きにくくなっていることが明らかです。

   この間、1.3%前後で推移していた住宅ローン35年固定金利は1.6%前後に上昇、同様に5年固定金利は0.8%前後から1.1%前後へ、10年固定金利も0.8%超から1.3%前後へと上昇しています。

   この短期間での長期金利の上昇は、7月の後半以降アメリカの実質金利が低下傾向にあることから、やや落ち着きを取り戻し始めています。が、世界的な経済情勢の変化が発生すると、イールドカーブコントロールが効かなくなる状況が起き得ることを示しています。

   したがって、これから住宅ローンを活用して住宅を購入しようと検討している方は、世界情勢の変化がどのように金利に影響するのかをイメージしながら、住宅ローン商品を選択するという姿勢が求められます。

   唯一、住宅ローン減税は2023年度も2022年度と同じ枠組みで実施されることが決まっているため、住宅性能の高い認定住宅は、住宅ローン元本の上限が新築では5000万円で13年間、中古では3000万円で10年間の控除が受けられます(中古一般住宅の元本上限は2000万円)から、住宅購入に向けての安心材料と言えるでしょう。

   新築&中古住宅市場とも全般的な物価上昇の影響は避けられない以上、2023年はより早い決断が求められる局面となる可能性は高いでしょう。いずれにしても、金利動向や価格動向など情報のアップデートを心掛け、その推移を注視していただきたいと思います。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
姉妹サイト