円安、物価高騰、固定金利上昇...気になる2023年「住宅流通」市場の行方は?...専門家が解説(中山登志朗)

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   日本ではご存知の通り、円安がある程度進んで消費者物価の上昇が発生していても、政策金利の低利誘導による金融緩和策を継続しています。

   これにはもちろん、いくつかの理由があります。ポイントは、下記の通り。

   (1)諸外国に比較してGDPギャップ(供給に比べて消費が弱い状況)が続いているため金利を引き上げると、モノがさらに売れなくなって、景気後退の局面に入り、インフレだけが進行する「スタグフレーション」を招きかねない。

   (2)日本は、国債残高が1000兆円超と、GDP比では先進国の中で突出して高い水準にあるため、金融引き締めで金利を上げてしまうと、利払いがかさむ。これも、景気後退要因になり得る。

   (3)金利を引き上げると、これまで超低利に誘導していた金融政策と正反対の政策となるため、金融市場が混乱し、企業業績の悪化や倒産件数の増加によって、景気を後退させる懸念がある。

   (4)金利を引き上げると、連動して住宅ローン金利(特に固定金利)も上昇し、これまで日本経済を支え続けてきた住宅産業に悪影響が及ぶ。

   (5)日本ではGDPギャップが大きく、消費が弱いため、金利を引き上げなくてもインフレ率が3%程度に留まっており、金利を引き上げるほどの物価高騰は発生していない。

   こういった理由が挙げられます。

   もちろん、金融緩和政策自体は、通常の金利政策とは「異次元」と日銀が認めていますから、このような状況を脱して、健全な景気回復軌道に乗せなければならないのですが、当面は(黒田総裁は、数年と言っています)上記の理由などによって、金融緩和策を取らざるを得ない状況が続くものと考えられます。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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