カルテルの背景、電力販売の自由化後に激しさ増した競争
大手電力はかつて、地域の電力販売の独占を法律で認められていた。
公益事業として、安定供給を優先することは、いわば常識だった。しかし、日本の電力料金が国際的に割高なことから、国は、コスト削減やサービスの多様化を目的に自由化に舵を切った。
まず2000年に特別高圧が自由化され、04~05年にかけ高圧に拡大され、16年に家庭向けの「低圧」が加わり、電力販売は全面自由化された。
こうして各社は、従来の営業エリアを越えて競争するようになった。
典型的なのがコンビニ大手セブン―イレブン・ジャパンで、15年に関西の約1000店舗の電力契約を、関電から東京電力に切り替えた。その一方、18年には中国、四国、中部の各電力のエリアにある約3000店の契約を関電にした。
こうした動きはサービス競争といっても、実質的には低価格を提示して顧客を奪い合うもので、各社のもうけが先細ることになり、今回のカルテルにつながったわけだ。
電力大手では、家庭用の規制料金について、6社が来春から30%程度の引き上げを申請して、国の審査を受けている。
原料価格の上昇分は「基準価格の1.5倍」まで転嫁が認められているが、この分を使い切ったため、値上げ申請に踏み切った(J-CASTニュース 会社ウォッチ「東北電力と中国電力、経産省に『規制料金』引き上げ申請...ほか4社続く見込み そうせざるを得ない『背に腹は代えられない』事情」 2022年11月29日付参照)。
この6社には中国電が含まれる。同社は2023年3月期決算の見通しで、純損益を1390億円の赤字と見込んでいたが、課徴金分を引き当てるとして、赤字額を2097億円に修正した。
これが値上げの審査にどう響くかは不明だが、値上げするためには厳しいコスト削減努力が求められ、役員報酬カット、株主配当の減配または見送り、従業員の給与削減などを迫られる可能性もある。
中国電はカルテル問題で、一段と厳しい対応を迫られることになった。(ジャーナリスト 白井俊郎)