ヒマラヤ山岳民族から学んだ、「アウトプットとインプット」のバランスの大切さ
本書の後半は、「弱者が勝つ」ための発想法講座、と銘打っている。実際、田淵さんはいくつかの大学で10年以上前から非常勤講師を務めている。
そこで実践しているのが、「アウトプット←→インプット」学習法だ。学生に事前課題を与えて報告してもらう。そして、次の授業では、田淵さんから細かな考察を加えてフィードバックする。だが、これで終わりではない。さらに、グループディスカッションで考察の内容をどう思うかを討論するなど、アウトプットとインプットを繰り返すのが、田淵流だ。
「アウトプットとインプット」のバランスの大切さを、ヒマラヤの山岳民族から学んだそうだ。
「弱者」がアピールで勝つための実践スキルも紹介している。
たとえば、就職活動の面接。まず、自分の「弱点」をさらけ出すのがポイントだという。面接官が知りたいのは、「あなたが自分自身の性格を的確に分析し、長所や短所を的確に把握しているかどうか」、さらに「それらをどう生かして、会社の役に立ってくれようとしているのか」である。
自分の弱点から説き起こす人には、興味を持ち、「自分の欠点を客観的に把握している」ところからスタートすれば、そこから先の伸びしろが期待できる、と考えてもらえると説明する。
また、リモート面接では、「すべてを大げさにする」。つまり、オーバーアクションするのがいい、と映像のプロとしてアドバイスしている。
テレビ局と秘境、そして大学という3つの現場のことが混然一体となって書かれた不思議な本である。
テレビ局をめざす学生だけでなく、自分が「弱者」だと思っているすべての人に勧めたい。(渡辺淳悦)
「弱者の勝利学」
田淵俊彦著
方丈社
1650円(税込)