景気後退は容認しても、スタグフレーションは断固阻止
ヤフニュースコメント欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏も、インフレの高止まりが問題だとした。
「米国のインフレは鈍化しつつあるものの、人手不足の賃金上昇でサービスインフレは粘着的。この点に配慮し、FRBは利上げペースを減速させつつも早期の利下げを否定しました。利上げのピーク(ターミナルレート)を5.125%へ引き上げ、それを長く維持する方針です。
今回の利上げで政策金利は4.375%となり、米国経済が耐え得る金利水準(=名目潜在成長率、4%)を超えました。また、利上げを受けて短期金利が長期金利を上回る逆イールドが拡大。これは銀行の預貸収益を悪化させ、貸し渋りを招きます。金融引き締めとは景気を悪化させてインフレを退治しようとするもの。今年3月以降の急速な利上げで米国の『投資環境(利ざや)』も『金融環境(資金繰り)』も悪化しており、景気後退入りの確度は高まっています。
FRBはインフレ退治のためなら景気後退も辞さない構え。リセッションは許容しても、(景気後退とインフレが同時進行する)スタグフレーションは阻止する姿勢が鮮明です」
と、今後の景気後退に警戒すべきだとした。
同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も米国の景気後退に懸念を示した。
「今回はほぼ答えが見えていた政策金利の0.5%引き上げよりも、政策メンバーの政策金利見通しの中央値がどこまで引きあがるかのほうが注目されていました。結果として、2023年末がプラス0.5%ポイント引き上げられ、当初の想定よりタカ派な結果となりました。
ただ、その割に金利上昇ドル高の反応が乏しかったのは、やはり実際にインフレ率の減速が明確化してきましたし、来年に向けての米国経済のさらなる減速の織り込みが強くなってきたということでしょう」
同欄では、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏も、FRBがインフレ退治のためなら「景気後退やむなし」の強い姿勢で臨んでいると、強調した。
「今回のFOMCで注目されるのはインフレ退治の『被害想定』が拡大したことです。金融引き締めによってインフレは鈍化するものの、その代償として経済活動は落ち込みが避けられません。
FRBが9月に示した見通しは、2023年の失業率は4.4%(現在は3.7%)、GDP成長率はプラス1.2%という数値でした。それが今回示された予想では、失業率は4.6%へと上昇し、GDP成長率はプラス0.5%と辛うじてプラス成長を維持するというものに下方改定されました」
と、具体的な数字を列挙。そして、
「これはインフレ退治の結果として『この程度の経済活動の落ち込みはやむなし、想定済み』というメッセージにみえます。つまり、これくらいの落ち込みならば金融緩和に転じる必要はない、という含意があるということです。2023年の政策態度は引き続き、金融引き締め的なものになりそうです」
と、金融引締めが続くと予想した。