「タカ派」発言の背景...市場が緩むと、引締め効果がなくなる
今回のFOMCの決定をエコノミストはどう見ているのだろうか。利上げ幅については「ほぼ予想どおりだった」という人が多い。
日本経済新聞オンライン版(12月15日付)「FRB、利上げ0.5%に減速 23年末見通し5.1%に引き上げ」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、
「市場が十分予想していた利上げ『ペースダウン』である。パウエル議長は記者会見で、現在の政策金利水準は『まだ十分に景気抑制的ではない』と述べ、利上げを続ける意向を強調した。市場金利低下や株高で金融環境が早い段階で緩んでしまうと、引き締め効果が不十分となる恐れがある」
と、パウエル議長の「タカ派」発言の背景を説明。そのうえで、
「このため『インフレ率が持続的に下向くと確信できる』まで、タカ派姿勢をFRB当局者は前面に出し続けるだろう。パウエル議長は『ピーク金利はデータが悪ければ引き上げられるが、インフレ指標が軟化すれば引き下げられる』と、記者会見で認めていた。インフレ率鈍化が順調に進めば、利上げの天井はFRBの現時点の想定(5.1%)よりも切り下がることになる」
と、金利の最終地点が今後、低くなる可能性を示唆した。
同欄では慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際金融論)も、予想どおりの決定だったことを強調した。
「今回の利上げ幅も来年末までの利上げ幅も私の予想と同じだった。インフレ率は低下傾向にあるが、賃金上昇率が高く、企業利益もまだ良好なので、求人数が多いことからみても、2%に向けて着実に下がっていくか不透明だからだ」
と、インフレが続いていると指摘。ただし、今後については、
「消費も食品などの実質消費は停滞しているが、耐久財やサービスの需要が強くサービスを中心に雇用の伸びは堅調だ。住宅市場は販売が年初から低迷しているが、住宅購入から賃貸を選択している人が増えているとみられ、その結果、家賃の伸び率は上昇を続けインフレの押し上げに寄与している。やはり来年2月3月頃にあと0.75%程度引き上げて上限を5.25%程度にして、来年末までは維持するというのが現時点では適切な判断だ」
と、FRBの強い引締め姿勢が続くと予想する。