「国債には頼らない」はずが、一部に「建設国債」あてる方針に転換か...歴代政権も使わなかった「禁じ手」
財源をめぐる岸田発言との矛盾はこれだけではない。
首相は防衛費増額の財源について「防衛力の維持強化のためには、安定財源の確保が重要だ」として、次世代に負担をつけ回す国債発行には頼らない、と強調してきた。
しかし、財源をめぐる与党内協議が難航すると政府は急きょ、自衛隊の施設整備の一部に建設国債をあてる方針を打ち出した。
自民党内では、萩生田光一政調会長が防衛費財源に国債を発行することも選択肢の一つだと発言するなど、最大派閥の安倍派を中心に、「国債発行論」が根強い。
「建設国債を発行することで、与党内のガス抜きにもなる」(首相周辺)狙いがあるが、この問題は政治の駆け引きの材料として簡単に利用していい話ではない。
防衛費の財源に建設国債を使うことをめぐっては、1966年の国会で当時の福田赳夫蔵相(後の首相)が「国債発行の対象とするのは適当ではない」と明確に否定した経緯がある。
歴代政権もこの見解を守ってきた。建設国債はインフラ整備などに充て、それが経済波及効果を生むという理屈で発行されている。それだけに、建設国債の防衛費への活用案は、戦後の政府方針を大転換することを意味する。
しかし、ここでも政府から明確な説明はほとんどない。岸田発言との矛盾に、国民の不信だけが高まっているかっこうだ。