円の巻き戻しで...震源地ではない「日本経済」が最も打撃を受ける
「製造業と非製造業で景況感に差が表れた今回の日銀短観の結果は、来年の日本経済の姿を先取りしている」。こう指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「短観(12月調査)は海外景気が最大のリスクとなる来年の日本経済の姿を先取り」のなかで、「2023年の日本経済は、再び大きな試練に晒(さら)されるのではないか。主なリスクは国内ではなく海外にある」と指摘する。
今回、大企業・非製造業が順調で、大企業・製造業の不調という差が出たが、先行きが懸念される外需とは対照的に、内需が比較的安定しているからだ。
ウィズ・コロナ政策によって水際対策も緩和され、インバウンド需要も増加、個人消費も持ち直している。一方、危機は海外からやってくる。「世界同時不況入り」の可能性だ。
「米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価高を定着させない強い覚悟で政策運営に臨んでいる。そのため、景気減速の兆候が広がり、また物価上昇圧力が多少和らぐ兆候が見られても、容易には金融緩和に転じないだろう。(中略)そうした過程で、米国経済は一段と下振れることになるのではないか」
「日本を除く主要国は、米国の急速な利上げに懸命に付いていくことで、対ドルでの自国通貨安を食い止めようとしている。こうして生まれた世界同時の大幅利上げ状態の下、先行きの世界経済は悪化し、世界同時不況入りの可能性が高まっているように思われる。
日本経済は現在のところは比較的安定しているものの、海外経済が顕著に悪化すれば、日本経済だけが安定を維持することは難しくなる」
そして、木内氏はこう結んでいる。
「海外経済が悪化し、FRBの金融緩和期待が高まる中では、為替市場では急速な円の巻き戻しが生じる可能性があるだろう。それも株価下落を伴って日本経済に強い逆風となり、震源地ではない日本の経済が他国よりも悪化することも考えられる」
(福田和郎)