「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
23年の株式相場は下落予想
2022年12月12日発売の「週刊東洋経済」(2022年12月17日号)の特集は、「総力戦で勝つ 株の道場」。
米景気の後退懸念が強い2023年は株価が乱高下する可能性が高いとして、好業績、高配当、テーマ株、チャート分析など総力戦による投資法を探っている。
まずは来年の展望から。23年の株式相場は下落する、と見ている市場関係者が多いという。シティグループ証券株式ストラテジストの阪上亮太氏は、23年3~4月あたりに日経平均株価が2万3000円程度まで下落するのではないか、と見ている。欧米の景気は一段と悪化するが、株価はその悪化を織り込み切れていない、というのだ。
「会社四季報」の業績予想も下向きだ。12月16日に発売される23年新春号の業績記事の見出しを集計したところ、「下振れ」が2番目に多かった。
一方、上昇基調を予測するのは、大和証券チーフグローバルストラテジストの壁谷洋和氏だ。1~3月期に米国の利上げ打ち止めがはっきりし、株高を支えると見ている。23年末にかけては米景気後退が明確になることで利下げ観測が強まり、不景気の株高が始まるとも予測している。
◆好業績の有望銘柄は?
「四季報」新春号から、好業績の有望銘柄を紹介している。
まず、上方修正率の1位は、特殊鋼メーカーの愛知製鋼。営業利益10億円を予想していたが、30億円へ上方修正した。高騰した原材料の鉄スクラップ価格が落ち着きを見せる一方で、過去の値上がり分の販売価格への転嫁が進み、大きな利ザヤを稼ぐ形になったという。
2位は、中国塗料。ウクライナ侵攻で生じた原油高の販売価格への転嫁が浸透する一方、足元の原材料市況が軟化して採算性が急改善した。
修正額ランキングでは利益規模の大きい大企業が中心だ。1位のSUBARUは、従来の営業利益2000億円から3000億円へ1000億円上方修正した。海外販売が8割と輸出比率が高いため、円安メリットを享受した。
4位日産自動車、5位三菱自動車、6位スズキ、8位いすゞ自動車、12位ホンダ、20位マツダなど自動車メーカーが上位に名を連ねた。また、3位JTや7位セブン&アイHDは、展開している海外事業の収益が円換算ベースで膨らんだ。
ランキングの2本目は最高益更新企業だ。更新率の大きい順に並んでいる。1位のルネサスエレクトロニクスは今期純利益が2820億円で、最高益更新率は121.6%。自動車の電動化需要を下支えに業績は高原状態が続くと予想している。3位のRS Technologies、4位のアバールデータなど半導体分野に勢いがある。
そのほか、5位のトレジャー・ファクトリー、36位のBEENOS、46位のコメ兵HDといったリユース企業の奮闘にも注目している。
◆インバウンド復活、航空機、水素などが注目テーマ
三木証券投資情報課次長の北澤淳氏が、新年の5大注目テーマと関連銘柄を挙げている。
1 インバウンド復活 ビックカメラ、共立メンテナンス、日本空港ビルデング
2 航空機 東レ、大阪チタニウムテクノロジーズ、ジャムコ
3 水素 エア・ウォーター、川崎重工業、トヨタ自動車、岩谷産業
4 ペロブスカイト型太陽電池 積水化学工業、東芝、西日本旅客鉄道
5 認知症治療薬 エーザイ、シスメックス、島津製作所
2022年は米国が急激に利上げを進めるなど、金融市場に劇的な変化が生じた。23年、米国株式市場のバブル崩壊を懸念する声もあり、依然としてリスクは残る中での株式投資になりそうだ。
「勝ち組」業界で慶應閥の躍進
「週刊ダイヤモンド」(2022年12月17日号)の特集は、「最強学閥 慶應三田会」。その人脈、金、序列を総まとめしている。
上場企業社長の数で、慶応義塾大学は他大学を圧倒している。卒業生が社長を務める上場企業327社の株式時価総額を足し合わせると78兆3000億円。これは、市場全体の時価総額の1割超を占める。
ライバル・早稲田大学出身の社長の上場企業は247社で、時価総額の合計は60兆円だから、日本の経済界で慶應は圧倒的な存在感を誇る、と指摘している。
そのうえで、慶應出身の社長「全327人」を徹底評価した独自ランキングを作成。時価総額、従業員数、純利益、在任期間など7つの指標から評価した。
1位はトヨタ自動車の豊田章男氏、2位は第一生命HDの稲垣精二氏、3位は三井物産の堀健一氏。ユニークなのは、三井物産。それまで同社の歴代社長は、東京大学など国立大学のみだった。ところが、堀氏は慶應卒というだけでなく、私立大学卒としても同社では初の社長となった。
金融や商社、コンサルティングといった「勝ち組」業界でも慶應閥の躍進が著しいという。三菱UFJ銀行の役員数では、慶應出身者は17人と東大と並び最多だ。7大商社の役員数でも慶應が58人で、東大の49人に水をあけ、最大学閥となった。
慶応義塾の最高幹部である評議員が、今秋、4年ぶりに改選された。面白かったのは、OBにとって、最高のステータスである評議員選挙の裏側を明かしている。
財閥系の名門企業やオーナー企業の大物経営者が占めてきた評議員に、楽天グループや米マッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者が食い込んだという。楽天の小林正忠常務執行役員チーフウェルビーイングオフィサーと、ぐるなびの杉原章郎社長は楽天の創業メンバーだ。両氏は総合政策学部出身の初の評議員で、塾内序列の変化を示しているとも。
今回新たに評議員に就いた20人のうち6人が女性。新興勢や女性の起用は、伊藤公平塾長の強い意向とされ、グローバル化など改革を進めるための布石と見られる。
ライバルの早稲田大学も入試改革を進め、難易度では慶應に競り勝つようになったが、働く現役世代の力は慶應の「一人勝ち」という状況が浮き彫りになった。
G7で日本の成長率がトップとIMFが予想
「週刊エコノミスト」(2022年12月20日号)の特集は、「日本経済総予測2023」。2023年の日本経済は、訪日外国人観光客の復活やDX投資などを背景に底堅い動きをたどりそうだ、と予測している。
冒頭で意外なデータを紹介している。主要7カ国(G7)で2023年の成長率がトップになるのは日本、と国際通貨基金(IMF)が10月、「世界経済見通し」の中で発表したというのだ。
日本1.6%、カナダ1.5%、米国1.0%、フランス0.7%...となっており、日本がG7トップになるのは、1989年以来34年ぶりの快挙だという。欧米主要国が軒並み落ち込む中で、底堅さが際立つ。
主要調査会社と金融機関に対するアンケートでも、平均すると1.3%となっている。サービス消費やインバウンド復活が好材料だ。
「2023年中に起きる可能性が高いこと」として、「電車やオフィスでマスクを着用しない人がする人を上回る」「日経平均が3万円を上回る」「岸田首相が辞任する」ことを挙げる回答が多かったことにも注目した。
個人消費について、第一生命経済研究所首席エコノミストの永浜利広氏は、コロナショックから正常化へと進み、「教養娯楽」「交通・通信」などの消費支出が増加すると期待している。
◆明るさの中に暗さが混じる「まだら模様」の年
物価と賃金はどうか。日本総合研究所副理事長の山田久氏は、「2023年の名目賃金は上がりそうだが、物価上昇には見合わないものになりそうだ」と見ている。
「電気料金は補助金がなければ過去最高になりそうだ」とは、日本エネルギー経済研究所主任研究員の江藤諒氏の予測。一般家庭向けの「電灯総合単価」は、燃料費調整制度の上限撤廃により、前年度比9.0%上昇の1キロワット時34.1円と過去最高となる見込みだ。
企業倒産は、「コロナ融資」の効果が消え、2023年春から急増しそうだ。帝国データバンク情報統括部情報取材課長の内藤修氏は、コロナ融資を借り入れている約6000社のうち、1割超の企業が「返済が難しい・返済できない」と回答しており、中小企業の過剰債務問題を注視している。
業種別では「建設」「食品」「トラック(運輸)」「サービス」といったセクターだ。22年の「後継者難倒産」は、10月時点で、年間最多ベースで推移している。長引くコロナ禍で、事業をたたむ「あきらめ型」の倒産・廃業が相次ぐ恐れがある、と指摘している。
2023年の日本経済は、明るさの中に暗さが混じる「まだら模様」の年になりそうだ。(渡辺淳悦)