EV向け電池などへの活路も、白物家電で稼ぐ構造変わらず
「創業者の経営理念以外は全て変えていい」と公言していた中村氏は、社長時代の2003年にグローバルブランドを「パナソニック」に統一する。
さらに、会長時代の2008年には、社名を松下電器産業からパナソニック(2022年4月からパナソニックHD)に変えた。日本の家電ブランドの代名詞だった「ナショナル」さえも捨て、世界を見据えてブランド力の向上を図ったのだ。
中村氏が去った後のパナソニックは、「何の会社なのか」という自問自答が続いている。
中村会長時代の2009年に買収した三洋電機が持っていたリチウムイオン電池の技術を使い、電気自動車(EV)向け電池の生産に傾注したが、今も利益の柱にまでは育っていない。
EV向け電池に限らず、企業向けの製品やソリューションサービスを重視する姿勢を強めているが、白物家電が稼ぐ構造は変わっていない。
社長時代には「破壊と創造」というスローガンを掲げて改革の旗を振っていた中村氏。かつて目指していた「売上高10兆円」は今も達成にはほど遠く、事業の入れ替えを進めて成長を続ける日立製作所、ソニーグループとの差は広がるばかりだ。
「改革」は未完のまま、最初の旗振り役が泉下の人となった。(ジャーナリスト 済田経夫)