「最近、退職を検討した」ことがある営業職が、約7割にのぼった――。
営業職のイマを調査するため、日本労働調査組合(東京都足立区)が全国の20~49歳の営業職の男女543人を対象に「営業職の勤務意識に関するアンケート」を実施した。2022年12月1日の発表だ。
同組合は、「(コロナ禍の影響もあって)会社の売上減、営業先・得意先の売上減、営業機会の減少と考えられる影響や要因はさまざまだが、長時間労働やノルマへの不安が低下していることから、がむしゃらに仕事に邁進していた時代から、新しい仕事のスタイルへの変革、しいては若年層のライフスタイルの変化に、会社側がどう対応していくかが必要と考えられる」と指摘している。
新型コロナの影響で「最近、退職を検討した」は約7割
調査によると、「最近、退職を検討したことがありますか」との問いに、「検討した」と答えた営業職は、全体で69.6%。
このうち、新型コロナウイルス感染症の影響を理由にあげる人は42.7%、「新型コロナウイルス感染症とは別の理由」があるとした人は26.9%だった。検討したことが「ない」と答えた人は30.4%だった【円グラフ参照】。
約7割が「最近、退職を検討した」としているが、多くの人が新型コロナウイルス感染症の影響で退職を考えたことがわかった。
世代別にみると、退職を検討した「20代」は79.9%にのぼった。「30代」が71.8%、「40代」が56.8%で、年代が上がるにつれて退職の意向は低くなる傾向がある【下のグラフ参照】。
コロナ禍の影響を理由に、退職を検討したことが「ある」と答えた人は、20代で48.4%、30代で52.5%、40代で27.0%だった。
また、コロナ禍の影響とは「別の理由」で検討したことがあるとした人は、20代で31.5%、30代が19.3%、40代が29.8%。退職を検討したことが「ない」と回答した20代は20.1%、30代が28.2%、40代は43.2%だった。
20代のじつに約8割が退職を検討していて、日本労働調査組合は「新型コロナウイルス感染症の影響から営業職の将来性に疑問を持つ若年層が多い様子がうかがえる」という。
また、性別でみると、退職を検討したことが「ある」と答えた男性は64.4%、女性は74.7%で、男性より女性のほうが10.3ポイント高かった。
内訳は、「コロナ禍の影響がある」と答えた男性が38.1%、女性は47.2%。「コロナ禍の影響とは別の理由」と回答した男性が26.3%、女性は27.5%だった。一方で、「検討したことがない」とした男性は35.6%、女性が25.3%だった。女性のほうが、コロナ禍の影響を受けている様子がうかがえる。
営業職が抱える不安「安い給料」「将来性」「モチベーション維持」
次に、「営業職として働き続ける場合の懸念や不安」について聞いたところ、第1位が「給料が安い」ことで33.5%。第2位が「将来が不安」の31.7%、第3位が「モチベーション維持」で30.9%となった。「上司や会社のプレッシャー」(23.4%)や「休みが休みにならない」(22.8%)、「成果が上がらない」(22.5%)と続いた【下のグラフ参照】。
同組合で今年5月に実施した調査でも、「給料が安い」と「モチベーション維持」はそれぞれ第1位、第3位で変わらなかった。
ところが、第2位だった「長時間労働」は今回の調査では第7位へ後退。また、5月の調査で第5位だった「将来が不安」が今回は第2位に浮上した。
コロナ禍の自粛ムードによる営業時間の短縮や働き方改革などの影響で、長時間労働は少なくなったが、その反面で、将来性に不安を感じている営業職が増えていることがわかった。
営業職として働き続けることへの懸念や不安には、「リモートワークがしたい」「ノルマに潰されそう」「自分のスケジュールで動かないことも多いため、プライベートは後回しになる」といった声が寄せられていた。
一方、「仮に退職をするとした場合の懸念や不安」については、「転職先が見つかるか」が21.3%で最多。第2位が「給与不安」の11.0%、第3位が「金銭不安」で10.7%だった。転職先が見つかるかどうか、退職後の金銭面や給与面への懸念や不安が7割以上を占めたが、退職する場合の「(懸念や不安が)ない」と答えた人は41.5%にのぼった。
寄せられた声には、「転職しても営業になりそう」「後悔しないかどうか」などの懸念や不安もあった。
営業職のメリットは「達成感」、デメリットは「ストレス」
営業職として働くことで最近感じる「メリット」を聞いた質問には、第1位が「達成感」で26.3%、第2位が「相手に喜んでもらえる」の26.0%、第3位が「いろいろな人と仕事ができる」の23.4%という結果になった。
一方、最近感じる「デメリット」は、第1位が「ストレス」で29.7%、第2位が「疲れる」で28.0%、第3位が「クレーム対応」の27.4%となった。今年5月の調査では「ストレス」が第6位、「疲れる」は第8位、「クレーム対応」は第2位だった。
5月に第1位だった「ノルマ」は今回の調査で第5位。ノルマよりもストレスや疲労が営業職として働くうえでの、最近のデメリットに感じているようだ。
ただ、ストレスや疲労は営業職に限った理由ではないため、コロナ禍の影響が小さくないとみられる。
コロナ禍の影響は、働く人が自身の将来を考えるきっかけにもなり、より具体的に将来設計を考える人が少なくないようだ。
日本労働調査組合は、「会社が具体性のある将来設計や価値を提供できない場合、入れ替わりの激しい営業職は若年層を中心に会社に見切りをつけていくと考えられる」とみている。
なお、調査は、全国の20~49歳の営業職543人を対象に、2021年9月17日~24日にインターネットで実施した。