有料老人ホームや介護施設などに入居する権利を譲ってほしい――。
こんな口上で誘い込み、ありもしない「老人ホーム入居権」を「譲ってほしい」と話を持ち掛ける詐欺が再び横行している。
そして、「(老人ホームに)入る気はありませんからいいですよ」と譲ると、「あなたの名義で申し込むので、一度、お金を振り込んで」と、なんと1000万円も要求するのだという。
国民生活センターでは2022年12月7日、「高齢者を狙った劇場型勧誘再び!?」という警告リポートを発表した。高齢者の親切心に付け込む悪らつな手口とは――。
「本人の申し込みだと証明するために1000万円必要だ」
国民生活センターによると、「老人ホーム入居権詐欺」の被害相談は、2014年~2015年の3000件前後をピークに減少傾向にあった。ところが今年、再び急上昇、10月末現在で685件と、昨年同期(38件)の18倍もの勢いだ。こんな事例が代表的だ。
【事例1】「老人介護施設の入居権を譲って」と言われ了承すると、本人からの申し込みだと証明するために1000万円振り込んでと迫られた
大手建設会社Aを名乗り、「老人介護施設の入居権を譲ってもらえないか」と電話があった。当市在住の70歳以上の女性のみに入居権があり、それを「譲ってほしい」という話のようである。その女性は利用するつもりがなかったので、「利用したい人がいるなら使ってもらって構わない」と伝えた。その後、「あなたの名義で他県の人が入居できることになった。入居権を管理しているBという業者から確認の電話が入るので、すべて『はい』と答えてほしい。迷惑はかけない」と連絡が入った。
Bから「入居一時金の入金が確認できた。本人に間違いないか」と連絡が入り、不安になってきたので、Aに「今回の話はなかったことにしてほしい」と伝えた。だが、「迷惑はかからないのでこのまま進めさせてほしい。警察に相談するとかえって大変なことになる」と言われた。その後Bからは、「金融庁の調査が入る。本人からの振り込みだと証明するために、いったん1000万円を振り込んでほしい。後日返金する」という電話が入った。
「そのような高額な支払いはできない」と断ったが、「摘発を防ぐために500万円だけでも協力してもらえないか」と重ねて振り込みを依頼された。怖い。どうしたらよいのか。(2022年4月・70歳代女性)
【事例2】「老人ホーム入居権」を他者に譲るためには200万円を振り込むよう言われ、支払わないと裁判になると脅された
ハウスメーカーを名乗る業者から、「お住まいの市に女性専用で70歳以上の方限定の老人ホームができる予定です。あなたにはそこに入居できる権利があります」と電話があった。覚えのない業者であり断った。ところが次の日にも電話があり、「他府県から入居希望の方がおられるので、あなたの入居権を譲っていいですか?」と聞かれ、「必要ないので譲っていい」と答えた。
その後また電話がかかってきて、「権利を譲るためには、いったん費用を払ってもらわないといけない。1000万円必要だが、800万円はこちらで何とか負担するので、200万円振り込んでください」と支払いを要求された。「年金生活のため無理だ」と断ったが、「裁判になってしまう。払ってもらわないと困る」などと脅された。
その後、損害保険会社を名乗る業者からも、入居権について電話があった。遠方に住む息子に相談すると、詐欺だから、すぐに消費生活センターと警察に相談するよう言われた。支払わないと、裁判などになるのか。(2022年5月・70歳代女性)