学生のみなさんとともに、およそ半年にわたって挑戦してきた「1万円からはじめる大学対抗!暗号資産バトル Season4」の最終結果が出そろった。
これまでを振り返って、アドバイザーの池田昇太さんから2022年の暗号資産市場の振り返りと講評、そして、参加者のみなさんから寄せられたコメントとともに、当企画を締めくくっていこう。
「米国株と仮想通貨の連動性があまり見られず、とくに後半のトレードは難易度が高かった」(アドバイザー・池田昇太)
●仮想通貨「冬の時代」による厳しいトレードバトル
2022年の仮想通貨は「冬の時代」と言われており、さまざまなマイナス要素が発生していたため、なかなか利益を上げるのが難しい年だったと思います。
11月にはビットコインの価格が2018年の最高値辺りまで下落し、そこから現在(12月頭)まで上昇する様子はなく、一定の低い価格帯で推移し続けています。
ここで一度、2022年の仮想通貨関連のニュースを振り返ってみましょう。私が印象に残っているニュースを5つ選んでみました。
・NFTゲームの流行
・Terraショック
・イーサリアムのアップデート
・イーロン・マスク氏のTwitter買収
・FTX経営破綻
まず1つ目が、NFTゲームについてです。
2022年はSTEPNのような「Move to Earn」を始めとして、「○○○ to Earn」といったような、「何かをしながら仮想通貨を稼げる」プロジェクトが増加していました。ただ、最終節で城さんもおっしゃっていた通り、現在のNFTゲームは新規ユーザーを獲得していかないと経営の成り立ちが困難なビジネスモデルが多く、何か別の収益源を確保しない限り、継続的な運用は難しいのではないかと思われます。
2つ目がTerraショックです。
今年の5月、ステーブルコインUSTとTerra(LUNA)が崩壊した影響で、仮想通貨市場が急落しました。5月はじめには500万円だったビットコインが、ひと月後には300万円にまで下落しています。今回の暗号資産バトルが開始されたのは、Terraショック後である6月からでしたね。
3つ目がイーサリアムのアップデートです。
9月に「The Merge」と呼ばれるアップデートが発生し、イーサリアムの承認アルゴリズムはPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)に変更されました。ETH(イーサリアム)の価格は想定より上昇せず、マージの期待によって支えられていたと思われる仮想通貨市場も一時期下落しています。
4つ目がイーロン・マスク氏のTwitter買収です。
ビットコインやドージコインなどの価格を揺さぶることの多いマスク氏が、10月末にTwitterの買収をしました。バイナンスCEOであるCZ(チャンポン・ジャオ)氏も出資していたことで、「Twitterに仮想通貨の導入が進むのではないか」という期待感が高まり、ドージコインや柴犬コインなど、一部の仮想通貨が大きく値動きしています。
そして5つ目が、記憶にも新しいFTX破綻です。
この影響は非常に大きく、仮想通貨貸付サービスを提供していたBlockFi(ブロックファイ)も連鎖的に破産申請をしています。
最終節で花野さんが言及されていたように、仮想通貨市場は4年に一度のペースでバブル発生・崩壊しています。今後も同様のことが続くなら、ここしばらくは仮想通貨市場の「冬の時代」が続きそうですね。
●難易度の高い相場で注目するべきトレード手法は?
マイナス要素の多かった仮想通貨市場ですが、それに加えて、アメリカのインフレ、利上げなどが絡み、より価格分析が困難になっていたのではないでしょうか。
米国株と仮想通貨の連動性も見られなくなってきており、今年の後半のトレードは難易度が高かったように感じられます。
◆花野さん、テクニカル面だけでなく、ファンダメンタル面の価格分析が光る
北海道大学の花野さんは、テクニカル面だけでなく、ファンダメンタル面でも価格分析をされており、主にアメリカの経済指標・株の動きを見て積極的にトレードをされていました。
トレードに必要な情報収集をし、戦略を立てて実践...という流れは思ったよりも時間がかかりますが、そのスキルは株やFXなど他の投資にも役に立ちます。
当然ながらトレード手法には正解がありませんが、利益を獲得するためにやるべきことを実践・努力を継続されていて、私もやる気をもらえました。
◆城さん、直近のニュースについての深い考察、冷静な戦略設計が見事
明治大学の城さんは、トレードもしつつ、仮想通貨・ブロックチェーンなどの技術的な側面に注目されていました。また、直近のニュースについて深く考察し、イーサリアムのアップデート時にはタイミングを見計らってETHを売っており、冷静に戦略を立てていると感じました。
これまでの回では、マイクロストラテジーやイーサリアムのロードマップ、トルネードキャッシュ、ICPなど、さまざまな点を解説されています。
私もニュースを追い切れていなかったり、知らない技術があったりしたこともあったため、読んでいてとても勉強になりました。
みなさん、半年間おつかれさまでした!
◆◆アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
つづいて、参加者のみなさんからの振り返りをどうぞ。
当初から、今回は「厳しい戦い」が予想され...
◆「真剣に仮想通貨の値動きに向きあえた半年間。これからもトレードを継続していく」(北海道大学 花野直樹さん)
正直、あまりいいところがありませんでした。大きな下落トレンドの中でショートをして儲ける機会はいくらでもあった中で、よいパフォーマンスを上げられなかったのが悔しいです。
僕が仮想通貨を触りだして半年ほどになるのですが、トレードバトルを通して、真剣に仮想通貨の値動きに向きあうことで、値動きの癖や、トレードバトル参加者の城正人さんの記事、池田さんのアドバイスを通して多くのことを学べたと思います。
この学びを生かしてこれからも仮想通貨のトレードを継続していきたいと考えています。短い間でしたが、ありがとうございました!
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
◆「2023年相場は上昇も下落もしない、いわゆるなぎ相場に?」(明治大学 城正人さん)
米国の利上げに伴い、リスク資産から資金が退避する流れの中、厳しい戦いが予想されていた今年のトレードバトル。収支は微増という結果に終わりました。
市場が大きく崩落する中で、ミーム化するアルトコインの上昇を取れれば、この市場の中でも大きな利益を取れたのにな・・・と反省。数か月に渡る円の下落やDoge(ドージコイン)の上昇を収益にできなかったことが悔やまれます。
さて、それでは今年の相場の振り返りと、2023年相場の乗り方について検討していきましょう!
2022年相場を振り返る
●1. 利上げに伴うリスク資産回避の流れ
米国消費者物価指数は高騰するエネルギー価格を背景に、前年比7%を超過。つまり、法定通貨の価値が下落し、モノの値段が異常な上昇を見せている、ということです。FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレを抑え込むべく、利上げを敢行。リスク資産から資金が退避する流れは止まらず、ビットコイン価格は1年間で70%の下落。
法定通貨の価値が下落する局面においては「仮想通貨はインフレヘッジになる」なんて言われた頃もありましたが、一部で正しく、一部で間違っているように感じます。特に現在においては、全く機能していない模様。
2020年4月以来、市中へ中央銀行が莫大な資金を投入していた際には、資金の待避先として、リスク資産である仮想通貨が選ばれましたが、現在は逆にリスクの高い資産からは資金が流出しています。
一部の投資家は利上げ幅縮小→リスク資産市場は活況へとの見方をしているようです。しかし、今後利上げのペースが鈍化していくとはいえ、2020年のように緊急的な措置として、莫大な資金を投入することはないでしょうから、本当にすぐに活況を迎えるのかは疑問なところ。
出典:United Status Inflation Rate
(https://tradingeconomics.com/united-states/inflation-cpi)
●2 市場を大きく動かしたFTX騒動
6万ドルの高値をつけたのち、2万ドル付近で推移していたビットコイン。以下の長期チャートをみていただければわかるように、大きく下落したのち、2万ドル近辺で横ばいの局面に以降しつつありました。が、FTX騒動の発生した11月、大きく2万ドルを割れてしまいました。
現在、ビットコインの時価総額は3000億ドル(44兆円)、最盛期には2.8兆ドルあった仮想通貨全体の時価総額は8200億ドルまでに減少。市場の縮小具合を実感させられます。
さて、FTXの与えた影響は、仮想通貨の価格だけにとどまりません。なにしろ「世界第2位、世界中に名を知らしめる取引所すらもいとも簡単に破綻する」ことを露呈してしまったからです。
もちろん、仮想通貨そのものの問題というより、それを管理する取引所のガバナンスの問題ですから今後規制は強まることになるでしょう。
(もちろん、より非中央集権的で使いやすい取引所が誕生すれば人気を集めるかもしれません。)
●3. 2023年相場どう乗り切るか
これは占いのようなもので、ただの山勘でしかありませんが、2023年相場は上昇も下落もしない、いわゆるなぎ相場になるのではなかろうかと思います。そして、次の上昇相場までの力を貯める時期になるでしょう。
したがって、相場としては「つまらない」と多くの投資家が去っていくでしょう。しかし、2020年、Uniswap(ユニスワップ)を発端に、DeFi(デファイ)全盛期を迎えたように、大きく世界に影響を与える製品が開発され、誕生するのもこの時期。
開発者イベントなどでどのようなプロジェクトがETH foundation(イーサリアム財団)から賞を受賞しているのかなどをチェックしておくと、今何が注目されているかをリアルタイムでチェックできるのでおすすめです。
●4. まとめ
さて、26回にわたって、さまざまなトピックをお送りしてきましたが、今回はまとめ記事ということで、本当の最終回。
ICPとBTCの統合など、密かに注目され続け、個人的に次の大相場で花開くのではないかという今後の相場に生きる話題も取り扱ってきました。
しかし、仮想通貨界隈では巷で言われるように、詐欺的なプロジェクトも少なくありません。「インフルエンサーが行っているから」「なんだかすごそうだから」ではなく、きちんと仕組みを理解して投資していきたいですね。
半年間、ありがとうございました!
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
◆(東京大学 迫嵩明さん)
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
みなさん、当企画「1万円からはじめる大学対抗!暗号資産バトル Season4」にご協力いただき、ありがとうございました! おつかれさまでした!(会社ウォッチ編集部)
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/