部下が自分の成長をイメージできる説明を
このため、上司が部下に仕事を任せる際には、「なぜその仕事を与えるのか」について、部下の将来を考えたうえで説明する工夫が必要です。
冒頭のケースの場合、上司は部下に新たな仕事の兼務を「良き経験」として、命じたとも考えられます。たとえば、日常業務に没頭するだけでなく、営業イベントの企画・運営にも関わることで、営業パーソンとしての幅を広げさせたいという意図です。
であれば、上司は次のように、説明をして仕事を任せるとよいでしょう。
「今回の営業イベントの準備に関わることで、お客様の理解や商品の理解を今まで以上に深めてほしい。また、社内で多様なメンバーと協働する力をつけるよい機会にもなる。それは、今後の君の仕事や成長に必ず役立つものだ。だから、少しきついかもしれないが、ぜひ挑戦してみてほしいんだ」
同じ仕事を任せるのでも、こうした伝え方ならば部下も自分の成長をイメージでき、モチベーションもアップします。上司の、部下より長い「時間軸」からの視界を言語化して、部下に伝えることが大切になるのです。
そして、もう一つの「視界の違い」は、「空間軸」の違いです。これについては、<他チームへの協力に、頑なに応じない部下...どう説得する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE17(後編)】(前川孝雄)>で解説していきます。
※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。
【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。