岸田政権が着々と進める「原発回帰」...半年も満たずに、原子力政策大転換 新増設・建て替えまで踏み込んだ「新政府方針」の是非

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新聞社説での反応は?...批判的・問題点指摘「朝日・毎日」、基本的に評価「産経・読売」、核廃棄物の課題挙げた「日経」

   原発政策は国論を二分するテーマであり、これまでも書いてきたように、大手紙の社説(産経は「主張」)の論調も賛否真っ二つで、今回も、はっきりと分かれている。

   脱原発の朝日新聞(12月1日)は「首相の検討指示から3カ月余の議論で大きな方針転換をするのは、あまりに乱暴だ。再考を求める」、毎日新聞(12月5日)も「原子力政策は日本の将来を左右する問題だ。国民的議論のないまま変更することは許されない」と、いずれも拙速な議論の進め方を強く批判。

   そのうえで両紙は「(革新軽水炉は)『安全性を高める』というが、福島の事故では放射性物質を閉じ込める五重の壁が破られた。大規模なテロや災害など、想定外の事態は起きうる」(毎日)、「廃棄物処分や、核燃料サイクルの行き詰まりについても、経産省案は取り組み強化や国の支援をうたうだけで、具体性を欠く。意気込みだけで解決するような問題ではないはずだ」(朝日)などと問題点を列挙している。

   原発推進の3紙はトーンに差が出た。

   産経新聞(12月1日)は、原発推進に政策を転換したことを評価する以前に、運転期間の上限は維持したことをむしろやり玉に挙げ、「原発の運転期間の延長幅が短く限定される可能性が高まっている。......これでは日本の今世紀半ばのエネルギー安全保障が危ぶまれる」と書いている。

   読売新聞(12月6日)はより現実的で、「停止期間を運転年数に算入せず、60年超の稼働を認めるのは現実的な措置だ」「『次世代原発の開発・建設を進める』と明記した。これまでの曖昧な姿勢から脱したことは評価できると」と、政策転換を評価し、新方針の着実な実行を要求する。

   日本経済新聞(12月2日)は「エネルギー不足の懸念解消と温暖化対策を両立させるうえで妥当な判断だ」と評価しているのは当然だが、「運転期間延長は、建て替えの推進と矛盾するようにも見える。当座の電源確保のため最低限の原子炉で運転期間を延ばし、その後は新しい炉に移行するといった道筋をわかりやすく示してほしい」と注文。

   そのうえで日経は、読売、産経が指摘しなかった核廃棄物問題にも「使用済み核燃料の再処理や最終処分地の選定など課題も多い。原発にいつまで、どの程度依存し続けるのかは、なお議論の余地がある」と言及し、同じ原発推進の読売、産経と比べ、バランスをとっているのが目立った。

   原発の再稼働一つとっても、地元同意がなかなか進まないなど、政策の具体化では乗り越えるべき山が次々に待ち構える。原発政策を転換したとしても、視界は容易には拓けない。(ジャーナリスト 岸井雄作)

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