岸田文雄政権が原子力発電への回帰に着々と歩を進めている。
当面の休止している原発の再稼働に加え、最長60年と定められている運転期間の延長、さらに新増設・リプレース(建て替え)に踏み込む新政府方針を、経済産業省の審議会での議論を経て、脱炭素社会への投資などの司令塔である政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で2022年中に正式に決める段取りだ。
新増設などの議論は、約7年の長期におよんだ安倍晋三政権でさえ先送りを続けたものだ。ところが、ウクライナ危機による資源価格高騰でエネルギーを取り巻く環境は一変した。液化天然ガス(LNG)の供給途絶などが現実味を帯び、政府にとっては政策転換の好機となった格好だ。
しかし、未だ国論を二分するテーマでありながら、参院選で争点にもならなかったのが、半年にも満たないうちの大方針の転換であり、「なし崩し的」との批判も絶えない。
大きな政策転換が2つ...「運転期間の延長」と「次世代型原発建設」
J-CASTニュース 会社ウォッチは「岸田政権の原子力政策、原発推進へ『政策転換』...再稼働、新増設、そして運転期間の延長着々」(2022年10月14日付)で、岸田政権が「再稼働」、「運転延長」、「次世代型原発建設」の3本柱で新方針をまとめるべく、本格的に動いていることを詳報した。
当面の再稼働は、原子力規制委員会の審査を経て、順次進められるのは既定路線。だが、大きな政策転換と言えるのが、「運転期間の延長」と「次世代型原発建設」だ。
これらについては、経産省が総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会で22年11月28日、「今後の原子力政策の方向性と実現に向けたアクションプラン(案)」として提示、12月8日の同小委で「行動指針(案)」として了承した。
それによると、まず、運転期間延長では、現行の原子炉等規制法によって、原則40年、延長は20年までという上限が決められているが、原子力規制委による安全審査に合格していることを前提に、経産省が40年超の運転を認める仕組みに変える。
また、最長60年という原則は維持しつつ、震災後の安全審査で停止していた期間などに限って運転期間から除外し、実質的に60年超の運転を可能にする――というものだ。
経産省は11月8日の小委員会で、(1)現行の上限維持、(2)上限を設けない、(3)上限を設けつつ追加的な延長の余地は勘案する(停止期間中の除外)の3案を提示した。そして、原発推進の委員が大半を占める小委では(2)の上限撤廃への支持の声が多かったが、さすがに世論の反発が大きいと見て、(3)を最終案にした。