「防衛にお金かけずに平和をもたらす方法を考えよう」
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞オンライン版(12月9日)「防衛財源『増税慎重に』 経産相、企業へ配慮求める」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」で、日本総合研究所創発戦略センターのシニアスペシャリスト村上芽(めぐむ)さんは、西村経産相が法人税増税に反対したことに関連して、
「増税するなら教育費にもっと使うべき、と、文部科学大臣もクギをさすべきではなかろうかと思います。防衛費をGDPの2%にすることは自民党の2021年選挙の公約でしたが、防衛にそんなにお金かけなくてもいいようにするためにどうしたらいいか、平和は何によってもたらされるのか、今だからこそもっと考えたいです」
と強調した。
ヤフーニュースのコメント欄では、法政大学大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)が、
「国民的な議論もなく、防衛費の増額にともなう増税が既成事実化し、2%のGDP相当の防衛費を確保するために国民に対して増税を求めるという。はたしてこうしたことを国民は予想していたであろうか」
と疑問を投げかけた。つづけて、
「なるほど、国土の防衛は重要である。しかしながら、およそ民主主義国家においては、国民的合意があることについてのみ、増税が認められるはずである。前回の参院選においては、国民に対して防衛費の増額について税負担を求めることは一切言われていない。それをどう判断するか。有権者はどうリアクションするのか、今後の選挙で明らかとなる」
と、唐突な増税論は民主主義のあり方の問題に発展すると指摘した。
同欄では、ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆりさんも、
「欧州などでは基本となっている『中期財政計画』を作成し、歳出と歳入のバランスをどう変えて行く方針かを示すことや、所得階層ごとに負担がどう変わるのかを示すことは、国民の理解を得る上では不可欠だと思う。
株、通貨、国債が同時に下落する混乱を引き起こした英国のトラス政権が打ち出したのは減税策だったが、国民は、大企業・富裕層優遇でバランスを欠くと感じ反発した。英国では首相が交代、新たな計画はバランス重視に変わった。英国は防衛費のGDP比3%目標を掲げるが、慎重に進めるスタンスだ」
と、英国の防衛費問題を引き合いに、岸田政権の拙速をいさめた。