最近、ESG投資という言葉をよく聞く。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Goverenance)の頭文字を取った「ESG」が、企業投資の新しい判断基準としてみなされている。本書「ESGが生み出す選ばれるビジネス」(インプレス)を読むと、ESGは投資の世界だけにとどまらず、企業の経営そのものにかかわることであることがわかる。
「ESGが生み出す選ばれるビジネス」(水野雅弘著)インプレス
著者の水野雅弘さんは、株式会社TREE代表取締役社長。顧客マーケティングの先駆者として米国からコールセンターなどを日本市場に導入。その後、活動テーマをサステナビリティにシフトし、グローバル環境映像メディア「GREEN TV JAPAN」のプロデューサーを経て2016年、SDGs達成に向けた教育メディア「SDGs.TV」を開設。著書に「SDGsが生み出す未来のビジネス」などがある。
まずは言葉の説明から。似たような概念として、SDGs(持続可能な開発目標)がある。SDGsが「人類共通の目標」であるとするならば、ESGは「企業の目標」と、本書では説明している。日本ではSDGsと比べると話題になる機会が少ないESGだが、海外ではESGのほうが圧倒的に多いという。
「非財務情報」が投資の軸に加わる
ESG投資を加速させたのは、2017年に発表された「ポジティブ・インパクト金融原則」だ。SDGs達成を目指すための金融機関向けの共通原則として、国連環境計画・金融イニシアチブによって策定されたものだ。
投資対象となる企業の活動が、環境・社会に対して、よい影響を与えられるような変化を促す投資のあり方を提唱したものだ。それまでリスクとリターンだった投資の評価軸に、環境・社会に対する影響という軸が加わった。
「財務情報」だけではなく、地球温暖化の一因になっている温室効果ガスの排出量など、財務には表れない「非財務情報」についても開示する必要性が確認されたのだ。
言い換えれば、金融機関から事業のための資金を調達するためには、環境・社会にポジティブな影響を与え得るようなビジネスの推進が求められるようになったわけだ。
ESGを投資だけではなく、経営の視点からビジネスに採り入れるという考えが広まっている。環境・社会課題の重要性をポジティブにとらえ、ビジネス活動を通じて解決できるように取り組むことは、結果的に社会からも投資家からも応援してもらえる企業になることにつながり、長期的に安定した収益と資金調達が実現するからだ。