賃金はそれなりに増えているのに、生活がどんどん苦しくなっている!
厚生労働省は2022年12月6日、働く人1人当たりの現金給与額などを示す10月の「毎月勤労統計」を発表したが、「実質賃金」が前年(2021年)同月より2.6%下回ることがわかった。
これで実質賃金の減少は今年4月以降7か月連続となり、下げ幅もその期間で最悪の数字。厚生労働省は「物価上昇のペースが速くて、賃金の伸びがなかなか追いつかない」としている。私たちの生活はどうなるのか。
「名目賃金」は順調に増えているが...
厚生労働省が12月6日に発表した「毎月勤労統計調査 令和4年(2022年)10月分分析結果速報値」によると、ポイントは次の通りだ。
(1)名目賃金に相当する10月の現金給与額の平均は27万5888円と、前年に比べ1.8%増で、今年1月以来10か月連続の増加となった。そのうち、基本給部分にあたる所定内給与は25万81円と、1.3%増の伸び。一方で、残業代などを含む所定外給与の伸びが大きく、7.9%増の1万95224円となった。
(2)現金給与額を、正社員などの一般労働者とパートタイム労働者に分けると、一般労働者の平均は35万7332円(1.9%増)、パートタイム労働者の平均は9万9556円(1.5%増)だった。産業別では、運輸・郵便業(6.3%増)や飲食サービス業(3.8%増)などが伸び、全体を押し上げている。
このように、給与の支給額は前年より伸びているのだが、実質賃金をみると――。
(3)物価の変動を反映した実質賃金は、消費者物価指数が前年同月に比べ4.4%も上昇したため、前年同月比で2.6%の減少となった。これは、今年4月以来7か月連続の減少だ。実質賃金指数でみると、2020年平均を100とすると、83.1となる。2020年の年間平均より実質で16.9%ポイントも減り、財布の中身が2年前の約8割になったわけだ【図表】。
(4)実質賃金の低下が7か月以上も続くのは、コロナ禍で緊急事態宣言が続いた2020年3月~2021年1月以来となる。
冬のボーナスが増加しても、消費は低迷する?
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
ヤフーニュースのコメント欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の小林真一郎氏が、
「雇用者の賃金は前年比1.8%増と着実に増加しています。中でも、新型コロナの感染拡大一服に伴って経済社会活動が活性化したことで労働時間が増加しており、所定外賃金が同7.9%増と全体を押し上げました。就業形態別の賃金も、一般労働者で同1.9%増、パートタイム労働者で同1.5%といずれも堅調に増加しています」
と、名目賃金が順調に増加していることを強調。つづけて、
「ただし、物価上昇によって実質賃金は減少が続いており、前年比でのマイナスは7か月連続で、マイナス幅も2.6%減と初回の緊急事態宣言発出のさなかにあった2020年5月の同3.3%減以来の減少幅となりました。賃金は増加しているものの、物価高によって家計の購買力減少が目減りする状態から抜け出せていません。
2022年冬のボーナスの増加に加え、2023年春闘での賃上げ率の拡大によって名目賃金の増加基調は維持されそうですが、物価高が収まらないようであれば、いずれ消費が低迷することになりかねません」
と、冬のボーナスに期待しつつも、消費への影響を懸念している。(福田和郎)