新電力が大ピンチ!...相次ぐ経営破たんに事業停止 東北電力、東京ガスが支援した「シナジアパワー」も倒産

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   新電力が経営危機に陥っている。2021年以降の卸電力(電力取引)価格の高騰に加えて、今年2月からのロシアによるウクライナ侵攻に伴う燃料価格の上昇が追い討ちをかけたことが原因だ。

   新電力事業からの撤退や一時停止、倒産が相次ぎ、12月1日には東北電力と東京ガスが共同出資したシナジアパワー(東京都台東区)が東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。「新電力の経営破たんはこれからも、まだ続くだろう」との見方が広がっている。

  • 新電力の経営破たん、まだ続くのか?(写真はイメージ)
    新電力の経営破たん、まだ続くのか?(写真はイメージ)
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東北電と東ガスからの電力の安定供給が強みだったはずなのに...

   自己破産したシナジアパワーの負債額は、2022年3月期末時点で約182億8102万円だった(企業信用調査の帝国データバンクが12月5日発表)。電気需給契約を締結していた顧客に対しては、事業終了日までに他の小売電気事業者などに契約の切り替えを促し、11月末までに完了しているという。

   同社は、2015年10月に東北電力と東京ガスの共同出資で設立。東北電力と東京ガスの発電所から電力供給を受けて、北関東を中心とした関東圏での高圧・特別高圧の顧客向けに電力販売を手がけていた。

   東北電と東ガスから、安定した電力を調達できることが強みだったが、卸電力市場の高騰で2020年度、21年度と2期連続で債務超過に陥っていた。厳しい資金繰りが続き、出資会社からの資金援助を受けながら、卸電力市場からの調達量を減少させたほか、仕入価格の上昇分の小売り電気料金への価格転嫁に努めるなど、収支の改善に向けた取り組みに注力していた。

   しかし、今年2月からのロシアによるウクライナ侵攻に伴い、原油や液化天然ガス(LNG)の価格が高騰したこと。また、脱炭素をめぐり、火力発電の稼働を抑えたことによる国内の電力需要のひっ迫などが響き、事業の先行きの見通しが立たなくなった。

   8月8日には、11月30日をもって電力事業の停止を発表していた。

仕入れ価格と販売価格の「逆ザヤ」が起きている

   新電力の多くは、自前の発電所を持たず電力大手や卸電力市場から電力を調達することで発送・配電コストを圧縮し、割安な料金設定とすることで顧客を囲い込んできた。

   12月5日付の朝日新聞朝刊は、トップニュースで「『地域新電力』に試練 自前電源足りず 価格高騰直撃」「8割が新規契約を停止」の見出しで、エネルギーの地産地消などをうたって立ち上げられた「地域新電力」が苦境に陥っている、と報じた。

   同社と環境NGOのパワーシフト・キャンペーンが今年10月に、自治体が出資したり、自治体と協定を結んだりした89社に卸電力市場の価格高騰が続く状況について質問した。

   その際、回答のあった72社のうち、86%(「甚大な影響で、今後の経営継続に影響を与える」18社と「影響があるが経営は継続の方向」44社の合計62社)が「経営に影響がある」とした。8社が「影響はそれほど大きくない」と答えた。2社は「無回答」だった。

   朝日新聞は、「自前の電源の割合が低く、電力の調達を卸市場に頼るが、電力価格の高騰で仕入れ価格が販売価格を上回る『逆ザヤ』が起きている」と指摘。卸電力の市場価格が高騰しても販売価格は容易には上げられず、売れば売るほど赤字になる状況にある、としている。

   前述の調査によると、対策として8割が「新規の受け付け・営業を停止」、7割が「料金の値上げを実施または検討」していた。また、市場への依存度を下げるため、自前の発電所を建設したり、市場に連動しない再生エネルギーによる電力調達を増やしたりする事業者が7割、蓄電池の導入などにも4割近くが取り組んでいた、という。

新電力の経営悪化、146社が事業撤退、廃業・倒産

   また、帝国データバンクが12月5日に発表した「新電力会社 事業撤退動向調査(11月)」では、2021年4月時点に登録のあった706社の新電力(登録小売電気事業者)のうち、11月28日時点で21%を占める146社が倒産や廃業、電力事業の契約停止や撤退などを行ったことがわかった。

   3月末時点では31社だったが、6月には104社に急増。その後も増加が続き、3月末から11月までで5倍近くに達した。

   このうち、新規申し込みの停止を含めた「契約停止」が91社で最多。6月の69社から22社増えた。電力小売り事業からの「撤退」は33社で、6月の16社から2倍に増え、「倒産・廃業」は6月の19社から3社増の22社となった。

   その一方で、電力の調達価格の高騰によって、利益確保が難しくなった新電力の相次ぐ事業撤退や倒産は、利用者にも大きな影響を及ぼしている。

   新電力との契約の継続が難しくなり、電力大手などから供給を受ける「電力難民」企業が、この1年で急増。10月には4万5866件に達した。3月の5477件から、じつに8.3倍もの増加だ。

   帝国データバンクは、

「発電設備を持たない売電事業の限界が露呈した。市場価格の高騰が続くなか、財務基盤のぜい弱な事業者だけでなく、大手企業グループでも電力小売事業からの撤退を余儀なくされる事態が相次いでいる」

と指摘している。

   新電力の事業撤退や倒産の状況をみると、22年3月にホープエナジー(福岡市)が破産、熊本電力(熊本市)が電力小売り事業から撤退した。そのほか、4月にはISエナジー(大阪市)が破産、エルピオでんき(千葉県市川市)が事業を停止。7月にはFTエナジー(東京都千代田区)が、10月には石川電力(金沢市)の倒産が発生するなど、事態が収束する様子はない。当面は新電力の事業停止や経営破たんが続くかもしれない。

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