京成電鉄の株価が2022年11月28日の東京株式市場で一時、前週末終値比60円(1.6%)高の3845円まで上昇した。
前週末に2023年3月期連結決算の業績予想について、最終利益を上方修正したことが好感された。
9月に新京成電鉄(松戸―京成津田沼間の「新京成線」や路線バスなどを運営)を完全子会社化したことによる「負ののれん発生益」を計上することに加え、持ち分法適用会社(19.97%の筆頭株主でもある)であるオリエンタルランドの業績改善も貢献する見通しとなった。
負ののれん発生益計上自体は10月末に発表済みだが、その好影響による上方修正が公表されたことで投資家の注目を集めた。その後も株価は堅調で、10月以来となる4000円台回復も視野に入っている。
「親子上場」による利益相反を解消、スケールメリット活かす効率経営へ
業績予想の修正内容を確認しておこう。最終損益は従来予想比70億円多い257億円の黒字(前期は44億円の赤字)。
京成電鉄は、新京成電鉄株式1株に対し、京成電鉄株式0.82株を割当交付する株式交換の方法により、東証スタンダードに上場していた新京成電鉄を完全子会社化した(新京成電鉄は8月30日に上場廃止)。
これにより、負ののれん発生益92億円を特別利益に計上する。負ののれん発生益とは、買収価格が対象会社の純資産の時価より低い時に買収側に発生する利益で、特別利益として損益計算書に計上する(該当期間の利益として処理する)ことになっている。
今回の株式交換の前、京成電鉄は新京成電鉄株を44.64%所有していた。
完全子会社化は、「親子上場」による利益相反を解消し、上場廃止によって事務手数料を削減。さらには、グループ全体としての意思決定の迅速化やスケールメリットを活用した効率経営を図るとしていた。このあたりの狙いも、改めて投資家に好感された模様だ。
交通需要の伸び悩み&燃料費高騰も...中国「ゼロコロナ」政策緩和は好材料か
しかし一方で、最終利益を上方修正した11月25日、売上高にあたる営業収益や営業利益、経常利益をいずれも下方修正した。
営業収益は従来予想より92億円少ない2630億円(前期比22.8%増)、営業損益は従来予想比96億円少ない119億円の黒字(前期は52億円の赤字)、経常損益は従来予想比38億円少ない239億円の黒字(前期は31億円の赤字)を見込む。
新型コロナウイルスを巡る政府の水際対策緩和が想定よりテンポが遅いことで、成田空港関連の交通需要が伸び悩むほか、想定を超える燃料費や電気代の高騰が利益を圧迫する。
もっとも、中国が厳しい「ゼロコロナ」政策の緩和に傾くなど、世界全体が「ウィズコロナ」に向かう方向にあるとの認識は広がっている。それにともない、成田関連の「インバウンド銘柄」でもある京成電鉄の株価が、上値を追う展開となる可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)