中国経済回復が米インフレを加速させ、FRBを悩ませる
こうした「変化」をエコノミストはどう見ているのか。
「金融市場目線でみると、中国がゼロコロナ政策緩和に動くと、米国のインフレを加速させる恐れがあるため、FRB(米連邦準備制度理事会)が困惑することになる」と指摘するのは、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏はリポート「中国のゼロコロナ終了がFedを悩ませる?」(12月6日付)のなかで、「今後、中国のゼロコロナ戦略が緩和され、中国国内の需要が復調すれば、それは米国を含む世界の財物価に対して上昇圧力(インフレ圧力)を生じさせ得るだろう」と述べている。
その証拠に、藤代氏は世界景気の強さを映し出す「銅」価格の底堅さに注目、こう説明した。
「銅価格は長引く中国のゼロコロナ戦略に対する失望、欧米の景気減速を背景に春先に急落した後、10月下旬まで安値で推移していたが、ゼロコロナ戦略修正の期待もあってか直近は反発に転じている【図表1】」
「今後、銅を含む工業用金属など広範なコモディティ価格(商品先物価格)が上昇する可能性があり、それは財物価を押し上げる方向に作用すると考えられる。中国の需要増大に伴い、中国国内でインフレ圧力が高まり、例えば中国PPI(卸売物価指数)が反転上昇するような状況になれば、米国にも一定のインフレ圧力が波及するだろう」
これまで、中国PPIと米国CPI(消費者物価指数)が一定の連動性をもってきた。【図表2】をみると、中国で卸売物価指数が上がると、米国の消費者物価指数が上がる相関関係がある。なぜなら、中国の最大の輸出相手国が米国だからだ。中国経済が活気づけば、米国の物価が上がるというわけだ。
藤代氏はこう懸念する。
「中国のゼロコロナ戦略見直しが米インフレの沈静化を阻害する可能性に一定の警戒が必要と判断される。Fed(米連邦準備制度)は、財インフレが終息に向かっていることに安堵しているとみられるが、中国経済回復に伴うインフレ圧力がFedを悩ませる可能性はある」