取りざたされる赤字国債の増発...財務省は警戒
自民党が警戒するのは、増税議論が自民党批判として跳ね返ってくることだ。
すでにその懸念は、現実のものになりつつある。
日本商工会議所の小林健会頭は6日の定例記者会見で、防衛費増額の財源候補とされる法人税率引き上げについて「(中小企業は)賃上げ原資が足りなくなる。国内投資を冷ましてしまう」と反発した。
法人税以外の税目についても関連業界の抵抗は避けられず、「増税はできれば避けたい」というのが自民党の本音のようだ。
財源論議が行き詰まる中、ここにきてまたぞろ浮上してきたのが、国の借金に当たる赤字国債の増発だ。萩生田氏も「2年くらいは国債でやむをえない」と容認姿勢を示している。
だが、これこそが財務省がもっとも警戒するシナリオだ。同省幹部は「安定財源を早期に明確にしないと、財源論がなし崩しにされかねない」と指摘する。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は11月末にまとめた建議(意見書)で、防衛費増額などについて「安易に国債発行に依存せず、安定的な財源を確保していくべき」と予防線を張った。
防衛費増額を打ち出した岸田首相は財源論をどう着地させるのか。自らの指示がいま、ブーメランとなって岸田政権に跳ね返っている。(ジャーナリスト 白井俊郎)