米国経済...景気後退から一転、バブル第2ラウンドも?
「週刊エコノミスト」(2022年12月13日号)の特集は、「論争で学ぶ 景気・物価・ドル円」。米国経済の景気後退入りの可能性は高いのか、低いのか? 日銀の政策見直しはあるのか、ないのか? などのテーマで論争している。
ここでは、「バブルは別の顔でやって来る」と題した、第一生命経済研究所首席エコノミスト、熊野英生さんの寄稿を紹介したい。
それによると、今後、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによって、23年の米国経済が景気後退入りする可能性があると思っている、としたうえで、その先、引き締めによる危機から、一転して楽観論が支配するバブル第2ラウンドに突入する可能性がある、という指摘が面白いと思った。
米国の株価は9月末にいったん底をつけて上昇基調に転じた。FRBの利上げの天井が見えたからだという。
また、日米のマネー総量の推移を見ると、コロナ禍の金融・財政の大規模な出動でトレンド線からそれぞれ大きく乖離しており、とくに「米国の経済活動は、かなりマネーがじゃぶじゃぶの上に浮かんでいると思える」と書いている。
金融引き締めを転換するのが早過ぎると、バブル再燃に向かうが、2%インフレを目指して金融引き締めを教条的に行い続けると、景気は著しく悪くなる、と熊野さんは指摘。この矛盾を常に頭に置いて、着地点を探っていかなくてはならない、としている。
焦点は米国の住宅価格だという。「今後、FRBが物価下落を促すために、住宅価格の大幅な下落を容認したとすると、資産市場に打撃が加わるだろう。ストック面での損失は間接的に金融システムにも悪影響が及ぶ」と見ている。
また、BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんは、「現在のインフレは各国がコロナ対策として大規模な財政・金融政策を行ったことも大きく影響したというのがコンセンサスになっていると思う」と話し、より厳しい金融引き締めと緊縮財政への転換が必要になると指摘。しかし、政府は拡張財政で物価高による国民生活への悪影響を吸収しようとしており、容易ではないようだ。
現在のインフレが供給制約やコロナ禍後の繰り越し需要、ウクライナ戦争だけが原因ではないという説明に納得した。(渡辺淳悦)