合意した基金は、すでに発生した被害に対する支援に特化
気候変動の問題に関しては、2015年のCOP21で、加盟国がCO2を削減していくことを約束したパリ協定が採択された。その中に、損失と被害への対応の重要性をうたう条項が設けられた。ただ、COP21の合意文書には、責任と補償の問題とは切り離して議論することも盛り込まれた。
これまでも、途上国への資金支援の枠組みはあったが、CO2排出削減に重点を置くほか、温暖化に伴う被害の防止・軽減策に対する支援が中心だった。これらは、いわば、被害を避ける、あるいは被害に適応するための資金といえる。
しかも、先進国側は2020年までに気候変動対策に1000億ドル(14兆円)を拠出すると約束しながら、実際の拠出額は20年に833億ドルにとどまるという「公約違反」もあり、途上国の不満が高まっていた。
今回合意した損失と被害に対する基金は、すでに発生した被害に対する資金支援に特化した仕組みだ。温暖化に適応できず、避けられない被害に対し、代償を支払うということになる。
先進国は「保障や責任につながる法的構造は作らない」(ケリー米気候変動問題担当大使)として、公式には認めていないが、実質的に「損害賠償」を認めたと考えていいだろう。