今後の焦点は「生産者物価指数」と「消費者物価指数」
一方、市場は今後どう動くのだろうか。「動揺したが、すぐ落ち着きを取り戻した」とみるのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「強い米雇用統計でも市場の動揺は長続きせず」(12月5日付)の中で、こう述べている。
「今回の統計でとりわけ目を引いたのが、賃金上昇圧力の強さです。平均時給は前月比0.6%増と市場予想(同0.3%増)の2倍の伸びとなったほか、10月分も同0.5%増(速報値同0.4%増)と上方修正されるなど、賃金上昇圧力の根強さを改めて示した格好です。
もっとも、市場の反応は限定的でした。強い米雇用統計を受けて、市場は株売り・債券売りで反応しましたが、その後は落ち着きを取り戻し、結果的に米国株先物は下げ幅を大きく縮小し、米10年国債利回りに至っては上昇から低下(前日比)に転じる流れとなりました」
市場の動きでもう1つの特徴的だったことは、「FF(フェデラル・ファンド)金利のピーク予想がそれほど切り上がらなかったこと」だという。
「今夏には市場予想を上回るインフレ指標が発表されると、FF金利のピーク予想が大きく切り上がり、大幅利上げが長期化するとの懸念から株価が下落する展開が続いてきました【図表2】。現時点で市場が予想するFF金利の利上げ幅は残り1%程度との見方が強まりつつあるなど【再び図表2】、FRBによる利上げは最終局面に近づいているようにみえます」
そして、今後の焦点をこう説明する。
「今後発表される米PPI(生産者物価指数)や米CPI(消費者物価指数)などが市場予想通りインフレ鈍化を示唆する内容となるかが当面の市場動向を占う上で焦点となりそうです」
注目の米11月生産者物価指数の発表は12月9日、米11月消費者物価指数は12月13日、そしてFRBが利上げ幅を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)は12月13日~14日に開かれる。(福田和郎)