「FRBが再びタカ派色を強めても不思議ではない」
なぜ、人出不足が解消しないのか。これについて、「コロナの影響を受けた米国経済の構造的なもの」と指摘するのは、第一生命経済研究所主任エコノミスのト藤代宏一氏だ。
藤代氏はリポート「12月FOMCは再びタカ派傾斜へ 雇用統計はFedにとって残念な結果」(12月5日付) の中で、米国の雇用者数と失業率のグラフ【図表1】を示しながらこう説明した。
「パンデミック発生当初、55歳以上の労働参加率(生産年齢人口のうち働く意志を表明している人の割合)は、パンデミック終息とともに鋭く回復していくと期待されたが、現時点においてそのペースは驚くほど鈍く、人手不足の主因になっている。
現在の雇用者数はパンデミックがなかった場合に予想された水準を約350万人下回っている。(中略)その内訳は移民減少によるものが約100万人、コロナによる超過死亡が約40万人、その他はいわゆるFIRE(金銭的独立を果たした人々の早期退職)や、コロナ後遺症に悩む人々が労働市場から退出したこと(=労働参加率低迷)があり、人手不足にはこれら複合的要因があるとされている。
換言すれば、労働者不足は構造的色彩を帯びているため、早期の回復は期待しにくい」
この雇用統計の結果、FRBはどう動くだろうか。藤代氏はこう予想する。
「今回の結果は12月FOMC(連邦公開市場委員会)における利上げ幅縮小(0.75%⇒0.50%)の予想に変更を迫るものではない。しかしながら、賃金インフレのしつこさを示すデータは2023年2月以降の利上げ幅が0.25%へと、さらに縮小するとの筆者の予想に疑問を投げかけた。
11月入り後、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が徐々に見えてきたことから長期金利の上昇圧力は和らいできたが、今回の雇用統計はFed(連邦準備制度)にとって失望的だった可能性が高く、それを受けて12月FOMCではFedが再びタカ派色を強めても何ら不思議ではない。
その場合、2023年末までに約0.50%(0.25%刻み)の利下げを織り込んでいる市場参加者の金利見通しは修正を迫られる可能性が高い」