医療費・介護費の「負担」問題...現役世代、高齢者世代それぞれどう思っているか? 健保連調査で明らかに(鷲尾香一)

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   医療費・介護費は高齢化の進展により受給者が増え続ける一方で、少子化で減少を続ける現役世代の負担の増加は大きな問題となっている。

   健康保険組合連合会の調査では、今後の医療費・介護費の負担のあり方について、「今後も現役世代の負担が重くなることはやむを得ない」と考える人が19.5%なのに対して、「高齢者世代の負担が重くなることはやむを得ない」と考える人は42.3%に上った。

  • 健康保険組合連合会の「医療・介護に関する国民意識調査」に注目(写真はイメージ)
    健康保険組合連合会の「医療・介護に関する国民意識調査」に注目(写真はイメージ)
  • 健康保険組合連合会の「医療・介護に関する国民意識調査」に注目(写真はイメージ)

「高齢者世代の負担重くなるのはやむを得ない」平均以上は20代・30代&70代 「今後も現役世代の負担重くなるのはやむを得ない」平均以上は20代&50代・60代・70代

   健康保険組合連合会は2022年11月16日、「医療・介護に関する国民意識調査」を発表した。同調査では、20歳から70歳代の3000人から回答を得た。

   調査結果によると、今後のあり方に対しては、「高齢者世代の負担が重くなることはやむを得ない」と回答したのが平均(42.3%)を上回ったのは、現役世代の20歳代の47.1%と30歳代の48.8%だった。さらに、意外なことに70歳代の45.6%となっている。

   一方で、「高齢者世代の負担増を求めることは難しく、今後も現役世代の負担が重くなることはやむを得ない」との回答が平均(19.5%)を上回ったのも、現役世代では20歳代の20.4%だった。それに加えて、50歳代の21.6%、60歳代の21.6%、70歳代の21.8%が現役世代の負担を求めている。

   この結果を見ると、高齢者の仲間入りが近い50歳代、年金収入に頼る60歳代、70歳代では現役世代の負担に頼る傾向が強い一方で、負担に対して現実味の薄い20歳代では、高齢者が負担するとの考えと現役世代が負担するとの考えの両方が平均を上回っている。

35万1800円の国民医療費「重い」64.8% 月額1万6300円の健康保険料「重い」68.7%

   つづいて、2019年時点で、国民1人当たり35万1800円となっている日本の国民医療費の規模に対して、「非常に重い」「やや重い」との回答が計64.8%を占め、特に60歳代では70.1%、70歳代では73.1%と高齢者で高くなっている。

   また、2020年現在で、加入者1人当たり月額1万6300円となっている健康保険料については、「非常に重いと感じる」「やや重いと感じる」との回答が計68.7%を占め、こちらも60歳代で75.5%、70歳代で73.4%と高齢者で高い割合となっている。

   このように、年金収入に頼らざるを得ない高齢者世代では、医療費負担、健康保険料負担に対して、「負担が重い」と感じている割合が非常に多いことが浮き彫りになっている。

   しかし、「今後、ますます増加する高齢者の医療費をどのように負担するか」を複数回答で聞いたところ、「患者自身の受診時の自己負担割合を引き上げる」が26.5%、「高齢者自身による保険料の負担を増やす」が22.0%という順となり、高齢者の負担を求める考えが上位を占めている。

   特に、30歳代は各世代の中でも、「患者自身の受診時の自己負担割合を引き上げる」と「高齢者自身による保険料の負担を増やす」の両方の回答がもっとも多くなっている。

   「税金による負担を増やす」は全体で17.2%だったが、70歳代では28.2%でトップ、60歳代では19.6%で2位の回答だった。

   一方、「現役世代が支払う保険料からの支援金を増やす」の回答は全体では7.0%にとどまったが、この回答を選んだ割合が最も多かったのは20歳代の11.5%。現役世代の中でも、20歳代とそれ以外の30歳代から60歳代までの間での考え方の差が鮮明になっている。

被保険者1人当たり月額6000円の介護保険料「重い」57.6% 介護保険サービスの自己負担「高い」35.6%

   それから、2021年度現在で、被保険者1人当たり月額6000円となっている介護保険料については、「非常に重いと感じる」「やや重いと感じる」との回答が計57.6%となったが、医療費負担、健康保険料負担と同様に60歳代で63.9%、70歳代で63.8%と高齢者が強い負担感を感じていた。

   一方で、介護保険サービスの自己負担については、「非常に高いと感じる」「やや高いと感 じる」との回答は計35.6%にとどまっている。各世代の中では、60歳代が37.8%でもっとも負担を感じている結果となっているが、70歳代では32.6%にとどまっている。

   サービスの自己負担については、自らがサービスを利用したことがなければ、実感を持って回答することが難しいのかもしれない。

   今回の調査では、政府が進めている病院の再編・統合についても質問されているのだが、「統合された病院の機能が充実するのであれば、病院の再編・統合に賛成である」と45.5%が回答。

   また、37.7%の回答者が「人口減少により医療の需要が減っている場合は、病院の再編・統合はやむを得ない」、31.3%の回答者が「医療従事者の確保が難しい場合は、病院の再編・統合はやむを得ない」とした。

   そして、「税金の投入や国民の負担を増やしてでも、病院の再編・統合はすべきでない」との回答はわずか13.2%にとどまっている。

   だが、この病院の再編・統合の背景には、政府が進める「医療機関の機能分化」があり、その推進方法にはさまざまな疑問がある。

   たとえば、紹介状なしで大病院を受診する場合の初診料が徐々に引き上げられ、今年10月1日からは7000円になっており、アンケート回答者がこうした状況を理解したうえで回答したのかは不明だ。

   いずれにしても、増大を続ける医療費・介護費の負担をどのようにまかなっていくのかは、社会保障制度の根幹にかかわる問題であり、その解を求めるのは至難の業といえそうだ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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