市場がFRBの「ハト派」化を期待しすぎると、インフレが長引く
同欄では、BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈さんも、ウォール街に冷静さを求めていた。
「市場と対話し、サプライズを起こさない。パウエル議長の講演がその流れを踏まえるものだとすれば、コンセンサス通り12月から利上げ幅を0.50%に下げてくる公算は大きい。ただし、喫緊出て来る雇用統計がとても強いものになれば、0.75%の金利上昇幅を維持する可能性もゼロでない」
と、甘い期待にクギを刺した。
「どちらにしろ、鍵は景気統計がどの程度弱まって来るか、物価高の圧力は本当にピークアウトしたのか、を見極めること。日本の物価高も春にはピークアウトし、それが見えれば利上げに踏み切れないまま、低金利が維持される。欧米の景気スローダウンを背景に金利差が縮小して、金融市場は再びのゴルディロックス(過熱もせず冷え込みもしない適温相場)に入る可能性が大きくなっている」
金融市場の過度の一喜一憂が、逆にFRBの足を引っ張ってインフレを長引かせてしまう、と懸念するエコノミストも少なくない。
ヤフーニュースのコメント欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏が、
「景気減速とインフレ鈍化を背景に市場ではFRBが来年の早い時期に利下げに転じるとの期待が高まり、国債金利が低下し株式市場の心理(PER、株価収益率)が好転しています。金利低下に伴うPERの上昇が主導する『金融相場(不況下の株高)』が再来するとの期待が高まっているようです」
と説明した。そして、
「しかし、市場がFRBのハト派化を期待するあまり、早々に金利低下や株高傾向が強まってしまうと、それが金融環境を緩め、人々のインフレ予想を上振れさせたり、インフレの鎮静化を遅らせたりすることになります。
このような時期尚早な市場の楽観をFRBは看過せず、必要なら再びタカ派姿勢を強めて市場に冷や水浴びせるでしょう。その点でPERには再低下のリスクがあります。足元の株価上昇を底入れと見るのは早計でしょう」
と市場関係者の振る舞いをいさめた。