パウエル議長からの一足早い「クリスマス・プレゼント」
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
まず、パウエルFRB議長の発言の狙いとウォール街の反応について、日本経済新聞オンライン版(12月1日付)「FRB議長、利上げ減速『12月にも』到達点は引き上げ示唆」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」で、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、
「11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)声明文は金融引き締めの累積効果とラグ(時間差)を強調。その後出てきたFOMC参加者発言の多くは、12月の利上げ幅縮小を示唆するものだった。
今回のパウエル議長の講演内容に違和感は全くない。むろんFRBとしては、株価なども含めた全体的な金融環境の緩みが進み過ぎてしまい、経済に及ぶ引き締め効果が時期尚早に弱まることは望んでいない」
と、予想どおりの発言だったと指摘。それなのに、株価が急騰したことに対しては、
「今回のパウエル講演を含めて、株高や長期金利低下をけん制する狙いのトークが混じることが十分起こり得る。そうした中で焦点になるのは、議長も講演で整理して説明していた、消費者物価の行方。前年同月比プラス幅が順調に縮小してくれば、利上げ終了観測が強まる」
と今後のデータが重要だとした。
同欄では、日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者も、
「(1)利上げ減速は『早ければ12月の会合になる』。そう表明したことを、金融・株式市場はパウエル議長からの一足早いクリスマス・プレゼントと受け止め、直ちに反応しました。
(2)FRB幹部による牽制発言で、市場参加者は自重していたのですが、パウエル講演を機に、金利の動向に敏感なナスダックが4.4%上昇し、半導体指数のSOXに至っては5.8%も跳ね上がりました」
と、ウォール街の「ハシャギぶり」に注目。そして、
「(3)同日発表された地区連銀報告(ベージュブック)でも、インフレについての記述が和らぎました。前回10月の報告にあった『高められた』が消え、『強い』ものの『ペース鈍化』の表現が。(4)既視感のある光景ながら、利上げの手綱が緩むことを市場は期待しています」
と、やや皮肉を込めた。