「仕入れ税額控除」には、インボイス登録が必要に...政府の仕込んだ「ワナ」
「ストップ、インボイス」。2022年10月下旬、東京・日比谷野外音楽堂で小規模事業主やフリーランスで働く人など1000人以上が集まり、制度反対の声をあげた。
インターネット上にも、「年収の大幅ダウンは避けられない」「もう仕事を続けられない」など、反対論が吹き荒れている。
インボイス導入のきっかけとなったのは、19年10月の消費税率引き上げだ。
食品などに適用される税率8%と、通常の10%という二つの税率に分かれため、納税事務が一気に複雑化した。このため、税率ごとの税額などを記載したインボイスを事業者間でやり取りすることで、納税額を正確に把握する必要がある――これが、制度導入の表向きの理由だった。
だが、国はここに一つの「ワナ」を仕込んだ。事業者が仕入れ税額控除をするには今後、インボイスが必要になると、仕組みを変更したのだ。
現在、納税義務が免除されている小規模な免税事業者も税務署に登録しさえすれば、インボイスを発行できる「課税事業者」になれる。しかし、課税事業者になれば、事務負担がかさむうえ、益税も期待できなくなる。
一方、取引先の中堅・大企業から見れば、相手がインボイスを発行できなければ仕入れ税額控除が利用できなくなり、その分、税金を取り返せなくなるという問題が生じる。
日比谷の集会などに集まった小規模事業者は「(取引先の中堅・大企業から)課税事業者になれと圧力が強まっている」と訴える。「ワナ」がすでに効力を発揮し始めたかたちだ。
課税事業者になるのを拒めば、取引中止や報酬の引き下げを迫られる恐れもあるだろう。そのため、インボイスの導入が小規模事業者にとって、死活問題となっている。