中国も変化の兆し、「ウィズコロナ」の研究を始めた
一方、習近平政権の「ゼロコロナ」政策もだいぶ変わってきた、と締め付け緩和に期待を示すのは、日興アセットマネジメントホンコンリミテッド副社長の山内裕也氏だ。
山内氏はリポート「『ゼロコロナとの戦い』から『コロナとの戦い』へ」(11月29日付)の中で、「(香港という現場にいて)明らかに変わったと感じる」として、こう指摘する。
「感染者数に対する共産党の許容度が高まっている点だ。(今年10月の)党大会後、(中略)感染拡大時にしばしば見られた現地責任者の処罰なども行なわれず、何かが変わったということを感じていた」
「政府の目標は、早期発見、早期隔離だ。オミクロン株では症状が軽く、感染が確認された頃には周囲に広がっているため、広範囲にPCR検査を行なって拡大を抑止する、というロジックだった。しかし現在は、そこまでして感染者を追う必要はない、という姿勢に変化しており、その必然としてもたらされる感染拡大は許容しているように見える」
「もう1つの変化は、地方政府の反応である。従来、ゼロコロナ政策の問題点は、地方政府の過剰な感染対策にもあった。(中略)地方の役人からすれば、いざ感染を広げてしまうと自分のクビに関わってくるからだ。しかし、今回、地方の対応は変化している。北京や上海で隔離措置を巡り抗議活動も伝えられているが、少なくとも党大会前に感染者数が二桁に達したら町中の人々をマンションに閉じ込め、1日に何回も大規模PCRを行なっていた時に比べれば、緩和は明らかだ」
ただ、人々の期待となお差があり、現場の実行も混乱しているという。そして、今後の習近平政権の出方をこう予測する。
「中国経済は、『ゼロコロナとの戦い』から、『コロナとの戦い』に徐々に変わっていくのではないか。その上で今の感染のピークを越えることができれば、方針のより大きな調整への見通しもよくなるだろう。現地アナリストは、欧米がウィズコロナに至るまでのプロセスを研究し始めた。少しずつだが、変化は起こっている」