中国人民銀行の景気下支えを「ゼロコロナ」がつぶした
「セロコロナ」政策に固執する習近平指導部が、中央銀行である中国人民銀行の景気浮揚策の足を引っ張っている現実を分析したのが、第一生命経済研究所主席エコノミスト西濵徹氏だ。
西濵氏はリポート「習政権による『動態ゼロコロナ』拘泥のしわ寄せを受ける中国人民銀行」(11月28日付)の中で、人民元の下落のグラフ【図表参照】など、多くの経済指標を示しながらこう指摘した。
「中国人民銀行は12月25日、12月5日付で預金準備率を0.25%引き下げる一段の金融緩和を決定した。同行は昨年末以降、漸進的に預金準備率や政策金利の引き下げによる金融緩和を通じて景気下支えに動いてきた。(中略)結果、昨年末以降の資金動向は底入れの動きを強めており、平時であれば景気底入れが促されやすい環境にある」
ところが、経済が上向くはずにもかかわらず、企業マインドが下振れしている背景には、当局による「ゼロコロナ」が景気の足かせとなっているとしか考えられないという。しかも、そこに、今回、全土で抗議行動が起こっている。今後はどうなるのか。西濵徹氏は「徹底した弾圧」が始まるだろうとみる。
「(政府が)動態ゼロコロナ戦略に基づく携帯電話を通じた人々の位置情報の把握を進めていることに加え、ここ数年は街中の監視カメラとAI(人工知能)を連動させる形で監視システムを発達させてきたことを勘案すれば、当局は今後、抗議行動の広がりに対して徹底した弾圧や逮捕、及び起訴などを通じた強硬策に打って出る可能性は充分に考えられる。
中銀が一段の金融緩和により金融市場への流動性拡大に動いたとしても、当局は動態ゼロコロナ戦略を変更する気がまったくない模様であり、実体経済への影響は極めて限定的なものに留まることは避けられないであろう」
中国人民銀行の金融緩和策の効果を、「ゼロコロナ」がつぶしてしまうというわけだ。