中国ウォッチャー「21世紀の天安門事件に波及する恐れ」
同欄では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際経済学)が、デモの背景にある経済面での問題をこう解説した。
「中国の市民は2つの問題に直面しています。1つは、ゼロコロナ対策が突然団地や商業施設・娯楽施設を閉鎖したり、収容されたりした方への対応が行き届かない面も多く、収入不安にもつながっていること。もうひとつは住宅市場の低迷です。不動産価格が中規模都市で低下し、住宅開発投資も滞っています。市民にとって住宅は重要な資産なので不安感が高まっています」
「中銀と銀行監督当局が銀行などに、今後半年間で償還期限がくる不動産業者向けのローン返済を1年延長するように通達したことで、いくぶん不動産開発業者の流動性問題が和らいでいます。未完成の住宅の建設を急がせたいようですが、根本的な解決につながらない可能性もあります」
ヤフーニュースのコメント欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏も「第2の天安門事件か」と驚きを隠さなかった。
「多くの経験豊富なチャイナウォッチャーたちが、『信じられない光景』と指摘しています。専門家の間では、21世紀の天安門事件に波及する恐れも指摘されつつあります。監視社会と言われる中国であるにもかかわらず、多くの人がデモをしているというところに、これまでとは違う変化を指摘する声も聞かれています」
そして、習近平政権の今後の出方について、
「国の治安を維持するために、習近平政権が経済を度外視するほどの強権的な対応を取るリスクが高まっています。習近平主席の権力が強まるほど、習近平主席の責任を問う声が共産党内で高まるとみられます。習近平主席は、これまで毛沢東のような振る舞いをしてきましたが、文化大革命のような混乱になるのか、今後が注目されます。不動産バブルの崩壊が中国経済のリスクと言われてきましたが、そこに、中国の政治の混乱という新たな要因が加わりました。中国から撤退する企業はこれから増えていく可能性があります」
と、危機感を露わにした。
同欄では、日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員の小山堅氏が、
「(抗議デモによって)株価やエネルギー価格は、中国での波乱を受けて荒れ模様の展開を示した。2022年に入ってからここまで、中国はまさに『ゼロコロナ政策』の影響もあって、国内エネルギー需要が低迷・減速し、それが夏場以降、足元まで原油価格下押し要因となってきた。また、中国がLNG需要を減少させた分、欧州が追加調達を実施可能となり、世界のガス市場にも大きな影響を与えてきた」
と、世界経済に与える影響の大きさを説明。今後については、
「中国の政治・経済動向は、世界の地政学と国際情勢全般に多大な影響を及ぼすことになる。現在の波乱がどのような展開を辿るか、要注意である」
とした。