国税庁は海外財産に対する情報収集を強化
「週刊エコノミスト」(2022年12月6日号)の特集は、「狭まる包囲網 税務調査」。相続税や法人税では過度な節税策に次々と手が打たれ、暗号資産などで得た所得の無申告の補足にも力を入れる、税務調査の最新情勢を追っている。
海外取引による課税逃れを封じるため、近年、国税当局は日本人が保有する海外財産に対する情報収集を強化している。その中でも「国外財産調書」「財産債務調書」「国外送金等調書」の3調書を重要視しているという。
5000万円を超える国外財産を有する人は、国外財産調書を提出しなければならないが、2020年分の提出件数は1万1331件で、本来の提出義務者はもっと多いのではないかと見られる。
未提出により加算税が加重されたケースは2020事務年度(20年7月~21年6月)で307件、申告漏れ金額は約88億円に上るという。多額のペナルティーを追徴されるケースが多発している。
所得税の確定申告書を提出する必要がある人のうち、所得金額が2000万円を超え、かつ、その年の12月31日において3億円以上の財産を有する人は、財産債務調書を提出しなければならない。今年度の税制改正で、所得にかかわらず、保有する財産の合計額が10億円以上である人も提出義務者になるとし、対象が拡大された。
これは、一部の富裕層がさまざまな節税スキームを使い、所得を圧縮し、提出義務者にならないようにしている実態が改正の背景にあったとされる。
海外送金等調書は、国外へ送金した金額または国外から送金を受けた金額が100万円を超えた場合に、金融機関が税務署に提出するものだ。国外財産の申告漏れがないようにしたいと注意を喚起している。
◆個人事業主の申告漏れ所得金額が多い業種、1位プログラマー
2020事務年度において、個人事業主の申告漏れ所得金額が多い業種として、プログラマーが1位になったという。
コロナ禍で副業が認められるようになったことが原因と考えられる。捕捉する手法として「支払調書」からの発覚が考えられる。
プログラマーのように、個人でビジネスを行う人が増えたことを背景に、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告(アフィリエイトなど)、ネットオークションなど、新たな経済活動の分野の調査を強化する方針を国税庁は掲げている。
こうした富裕層への課税強化は歓迎すべきだが、第2部では来年10月から始まる消費税のインボイス制度導入による混乱をまとめている。
零細事業者が取引から排除される、欠陥制度であり、フリーランスや起業者を生みにくい社会を作るという指摘は、もっともだと思った。来年にかけて、大きな問題になりそうだ。(渡辺淳悦)