働く人の約半数が、テクノロジーを活かして精神疾患を改善する試み・サービス「メンタルヘルステック」に関心を持っている――。
NTTデータ経営研究所(東京都千代田区)の調べによると、20代の5人に1人がWEBやアプリケーションなどのICT技術を「心の健康ケア」に活用していることがわかった。
20代はストレス改善も「SNS」
コロナ禍での働く人のストレスの増加とメンタルヘルステックの急増を背景に、調査では20~50代の働く人を対象に、実践しているストレス解消方法とメンタルヘルステックの利用に関する意識を聞いた。
生涯を通じて、心の不調を経験する人の割合が5人に1人といわれる。そんななか、いまや働く人のメンタルヘルス対策は多くの職場で喫緊の課題だ。そうした状況にあって同社は、新たなストレスケアとしてのメンタルヘルステックに着目し、その活用の可能性を探った。
「ウィズコロナ時代における、働く人のストレス解消方法とメンタルヘルステックの活用可能性に関する調査」によると、精神的健康度が低い人が約半数にわたり、新型コロナウイルスのまん延以降にストレスが増えた人の7割弱に、自身の心の健康(メンタルヘルス)への関心が高まっていることがわかった。
仕事によるストレスの原因としては、全体では「対人関係」が多く、続いて「仕事の量」があげられた。さらにストレスの原因は年代によって、違いがあった。
たとえば、20代では「仕事の失敗・責任の発生等」、30代では「仕事の量」、40代では「対人関係」が顕著だった。キャリアの形成段階によって、ストレスと感じる事象が異なることが推察される。
また、日常的なストレス解消方法のうち、自身のストレス改善に繋がった方法として、30~50代は「休む・寝る」「好きな食べ物や飲み物をとる」「ストレッチや運動をする」といった、一人でできる基本的なストレス解消方法が多くあがった。
ただ、50代では「ストレス解消方法を実施していない」という割合も高く、うまくストレス解消方法を実施できている人とそうでない人と、二極化していることもわかった。
その一方で、20代をみると、「SNSをしたり(投稿したり、他の人の投稿をみる)、ネットサーフィンをする」が最もストレスの改善につながっている方法としてあげられた。
また、30~50代と比べて、「家族や友人に相談する・話を聞いてもらう」や「ボランティアや地域活動をする」といった答えも少なくなかった。
20代はいっしょに暮らす人がいない割合が顕著に高い(45.8%)うえ、テレワークの実施率も高く(38.5%)、ふだんから人とコミュニケーションをとることが少ない。そのため、NTTデータ経営研究所は、人とのつながりを持つことがストレス解消につながっているのではないかとみている【下図1参照】。
20代は、「自身」について相談することに「不安」と「抵抗感」
調査では、職場の相談窓口(産業医面談やカウンセラーへの相談など)と、職場とは関係のない相談窓口(電話相談や病院、カウンセリングオフィスなど)と、WEBやアプリケーションを用いたキャラクターやロボット(AIを用いたチャットボットなど)への相談の、それぞれに対する不安感や抵抗感についても聞いた。
その結果、若い世代になるほど、相談手法に関係なく、自身について相談することへの不安感や抵抗感が強いという傾向が見受けられた。
特に20代は、相談窓口などを利用することで、周囲に変なうわさが立てられたり、周りからメンタルヘルスの問題がある人だと思われたりすることを避けたい、といった意向が強い。身近な人にこうした相談窓口を利用したことを言いづらい、と考えていることがわかった【下図2、3参照】。
20~30代「メンタル面やストレス耐性の強化」が目的
さらに、WEBやアプリなどでメンタルヘルスケアやストレスケアができる「メンタルヘルステック」についても聞いた。それによると、回答者の45%以上が「関心を持っている」とし、約1割が実際に利用していることがわかった。若い世代になるほど関心が高く、20代の認知率が最も高く、2割弱が利用しているという。
そして、メンタルヘルステックの利用者(過去の利用を含む)に、その目的を聞くと、特に「メンタルヘルスに関連する病気の予防」(34.5%)、「ストレス解消・緩和」(34.5%)、「仕事へのモチベーション向上」(29.2%)が多くあげられ、7割以上が目的に見合っていると感じていた。
特に、20~30代は「メンタル面やストレス耐性の強化(30.6%)」を目的としている人も多い。メンタルヘルステックは、不調の改善というマイナスの状態をゼロの状態にするための活用だけではなく、自身のメンタルヘルス(心の健康)をより増進していくことにも活用されているようだ。
回答者全員には、自身のストレスを緩和・解消するために使いたいと思うアプリサービスも聞いた。すると、20~30代は「自身のストレスの要因を可視化してくれるサービス」(27.3%)や「自身のストレス値を可視化してくれるサービス」(23.2%)へのニーズが高く、40~50代は「自分自身に合うストレスの緩和・解消方法を教えてくれるサービス」(18.6%)に対するニーズが高かった。
20~30代を中心に広がりつつあるメンタルヘルステックだが、NTTデータ経営研究所は今後の利用法について、初めから本格的なメンタルケアを行うのではなく、日頃からライトに自身のメンタル状態を把握したり、メンタルケアを行うことができたりするような使い方が適しているのではないか、と考えている。
実際に、24時間365日いつでもオンラインカウンセリングが可能なサービスや、アプリ内でうつなどに効果的な心理療法を受けることができるサービスが出てきている。
なお、調査は10月10日の世界メンタルヘルスデーを前にした2022年8月5日~10日に、「NTTコム リサーチ」にモニター登録する20~50代男女の就業者を対象に実施。有効回答者数は1130人だった。