値上げの妥当性、原価の削減余地ないか厳しく査定...役員報酬・従業員の給与カットも?
政府はこうした電力の苦しい事情は理解している。
「来春以降に一気に2割から3割の値上げとなる可能性もある」(岸田文雄首相)と見越し、23年1月から、電気料金の負担軽減策を盛り込んだ22年度補正予算案を国会に提出している。
とはいえ、申請には国の厳しい審査が待っている。
通常、4か月程度かけて値上げの妥当性を精査する。具体的には、今後3年間で予測される燃料費や、発電施設の維持・改修費といった電力供給に必要な費用(原価)に一定の利益を上乗せする「総括原価方式」と呼ばれる方法で算定する。
そこで、まず、原発をどう扱うかが焦点になる。
原発の再稼働を織り込めば、火力発電の燃料費がその分、少なくなり、値上げ規模を圧縮できる。岸田首相が、再稼働した実績のある原発10基に加え、23年夏以降に、東北電女川原発2号機▽中国電島根原発2号機▽東京電柏崎刈羽原発6、7号機など計7基の再稼働を目指す方針を示しているのはこのためだ。
しかし、再稼働には立地自治体の同意が必要なほか、運転差し止めの司法判断が下された例もあるなど不確実性もあり、そうした見通しを適切に織り込むのは容易ではない。
さらに、電力会社が算定した原価に削減余地がないかも厳しく査定される。「役員報酬カットは当然として、株主配当の見送り、さらに従業員の給与削減も検討せざるをえない」(業界関係者)との声もある。
こうした「痛み」を覚悟してまで規制料金値上げに動かざるを得ないことは、電力会社の置かれた状況の苦しさを示している。(ジャーナリスト 白井俊郎)