石炭への依存度が高い電力会社は特に苦しい
では、各社に負担する余力はどのくらいあるのか。
大手10電力の2022年4~9月中間決算は、四国電力を除く9社が純損益で赤字に陥り、23年3月期通期も、予想を示していない東京電力HD、九州電力を除く8社が赤字を見込む。うち4社の赤字幅は過去最大となる見通しだ。
とはいえ、各社で事情に違いがある。大きいのが発電に占める石炭火力のウェートと原子力発電の有無だ。
石炭への依存度が高い電力会社は、特に苦しい。直近の石炭価格(豪州産スポット価格)は2021年4~6月から4倍近くに跳ね上がった。
二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭は、脱炭素の流れの中で開発への投資が減少していたところに、ウクライナ危機が勃発。ロシア産LNGの輸入が減った欧州で石炭火力への回帰が進み、世界的に需給が逼迫し、原油やLNGを上回る急騰ぶりとなっている。
値上げ申請した2社、予定する4社はいずれも石炭火力の依存度が高い点で共通する。
一方、九州電力は原発4基(一時停止中の2基含む)が再稼働し、化石燃料の依存度は36%(21年度、石炭だけでは21%)、関西電力も原発の稼働で化石燃料依存度は43%(同、17%)と低いことから、相対的に石炭などの値上がりの影響が少ない。
また、火力依存度が高い北海道電力、中部電力は経営努力でコスト増を吸収すべく、現時点で値上げ申請は予定していない。