NISA恒久化は「資産所得倍増」の起爆剤になるか? エコノミストも賛否「金融界や投資家が求めてきたもの」「スズメの涙、成長戦略との好循環が必要」

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NISA投資額を倍増させても、個人金融資産約2000兆円のわずか2.8%

将来の資産計画を考える若いカップル(写真はイメージ)
将来の資産計画を考える若いカップル(写真はイメージ)

   一方、NISAの投資額を2倍に増やしても経済効果が望めないばかりか、「所得倍増」にもほど遠いと批判的なトーンなのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏はリポート「NISA倍増だけで終わらせるな(資産所得倍増計画)」(11月25日付)の中で、5年間でNISAの口座と投資額をそれぞれ倍増させるという政府の「掛け声」に疑問を呈した。

「NISAを倍増させることができても、それは政府が掲げる『資産所得倍増計画』、あるいは『貯蓄から投資へ』の達成にはなお遠いことも理解しておく必要がある。拡充策の奏功でNISAの投資額が大幅に増えても、それはNISA以外の投資をNISA口座に移し替える部分を多く含むためである。
また、資産所得を倍増するには、個人金融資産のうち、現金、預金以外の収益性が高い株式、投資信託などの金額を大幅に増やすことが求められる。ただし、NISAの投資額を現状の2倍の56兆円まで増加させることができても、それは依然として個人金融資産約2000兆円のわずか2.8%に過ぎないのである」

   また、政府が、この低金利環境下にもかかわらず、国民の多くが金融資産の過半を極めて低い利息の銀行預金に置き続けているのは、「金融リテラシーの欠如を反映している」として「金融教育が必要だ」としていることに対しても、木内氏はこう批判する。

「これは、むしろ個人が合理的に判断した結果とも言えるのではないか。日本経済の低迷が長く続き、企業の成長力が低い中、株式投資から得られる収益への期待も決して高くないはずだ。その下で、相対的にリスクが高い株式投資に個人が慎重になるのも自然なことと言えるだろう。個人が株式投資を拡大させるには、日本経済と企業の成長力が高まり、株式投資の期待収益率が高まることが必要になるのではないか。
『貯蓄から投資へ』、『資産所得倍増計画』は、人への投資、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略、気候変動リスク対応のグリーントランスフォーメーション(GX)など、政府が掲げる幅広い成長戦略と一体で推進していくことが強く求められる。
そうした政策の下、企業と個人の成長期待がともに高まれば、投資と投資収益が相乗的に増加していく好循環が、企業と個人の間で始まることになると期待される」

   NISAだけ拡充してもスズメの涙、成長戦略と一体化して進めないと意味がない、というわけだ。(福田和郎)

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