金融界や投資家が求めてきたものが、大きく実現する
今回の案についてエコノミストはどう見ているのだろうか。
ヤフーニュースのコメント欄では、期待を寄せる意見が相次いだ。第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏は、
「既存の制度は長期投資を促す狙いがあったにもかかわらず、非課税期間が設けられているため、制度の趣旨が伝わりにくい部分もありますが、これが現実になるならば大きな前進です。
また、経済全体にリスクマネーを供給するという意味においてもNISAの恒久化は効果的だと考えられます。その他、投資を通じて経済・金融の基本が広く浸透するという副次的な効果も期待されます」
と、さまざまなメリットを指摘した。
同欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏も、
「制度の恒久化、非課税期間の無期限化、投資枠拡大が実現すれば、金融界や投資家が求めてきたものが実現し、かなり大幅な制度改善と言えます。金融機関側としても、NISA向けの商品を拡充することで、個人投資家が投資をしやすいようにしていく必要があると思います。その際、個人投資家が安心できるようなリスクが高くない商品を開発していくべきでしょう。『貯蓄から投資へ』に向けた政策として前向きに評価できる動きです」
として、さらなる規制緩和や税制優遇に期待をかけた。
一方、制度上の疑問を投げかける意見も。
日本経済新聞オンライン版(11月25日付)「NISA恒久化、貯蓄から投資へ 預金1000兆円を誘導」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、日本経済新聞社編集委員の田村正之記者が、
「NISA恒久化が実現する場合、次の関心はもちろん金額です。単年度の金額とともに大事なのは全体の非課税の総量。現在のつみたてNISAは年40万円、最大20年非課税なので800万円の非課税枠です。
今回非課税期間を無制限にする場合、金融庁が夏の要望で打ち出したのが、投資額の残高(簿価)で考える生涯投資枠という新たな枠。住宅資金などのために売ればその分枠が復活、資金に余裕ができれば改めて投資できる斬新なものです」
と、金融庁の要望案を説明した。そのうえで、
「ただこの残高(簿価)方式、金融機関にとってはシステム改修が大変で、かなり時間がかかります。残高方式が実現する場合、いくらに設定するかが非常に重要で、年末の税制大綱へ関心が高まります」
と結んだ。