女性が活躍できる会社でなければ、成長は望めない!――これが、近年の勝ち組会社の「方程式」と言っていいだろう。そして、女性が生き生きと働くためには、最低限、男性と同等の「年収」も鉄則となる。
そこで、就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「Open Work」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が2022年11月24日、会員ユーザーの口コミ投稿から調査した「【年齢別】女性社員の年収企業ランキング」を発表した。
そこから見える、高い年収の女性たちが活躍する企業の魅力とは――。
1位野村総研、2位電通、3位P&Gジャパン、4位PwCコンサルティング
Open Workは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイトだ。会員数は約515万人(2022年10月時点)で、企業の評価を「待遇の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」など8つの指標を5段階で評価している。1380万件超のクチコミ数と評価スコアが蓄積されている。
今回の調査では、なかなか知ることができない女性社員のリアルな年収事情に着目。蓄積された女性社員の年収・給与データをもとに、独自に開発したアルゴリズムを使い、企業ごとに異なる賃金カーブを25歳から5歳刻みで可視化した。そして、25歳から40歳までの5歳ごとの年齢別想定年収を算出、30歳時点の想定年収上位30社をランキングにした。
その結果、30歳時想定年収では、1位に野村総合研究所(842万円)、2位に電通(829万円)、3位に米国に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーのP&Gジャパン(812万円)、4位に英国に本拠を置くPwCコンサルティング(800万円)、5位に世界最大規模の会計事務所デトロイト トーマツコンサルティング(797万円)がランクインした【図表参照】。
また、25歳から40歳にかけての年収アップ額では、1位は世界最大の顧客管理プラットフォームのセールスフォース・ジャパン(プラス619万円)となった。なんと、そのアップ額は25歳時年収から2倍以上となっている。
以下、2位が電通(プラス542万円)、3位が野村総合研究所(プラス537万円)、4位が米のIT大手のアマゾンジャパン合同会社(プラス522万円)、5位がトヨタ自動車(プラス491万円)と続く【再び図表参照】。
ランキング全体を見渡すと、外資系企業がトップ10社中5社を占めるとともに、日系企業では製薬や自動車のようなメーカー系や金融・証券などのランクインが目立つ。
P&Gジャパン「キチンと評価をした給与は成績表のようなもの」
実際に働いた女性社員が投稿した「年収・給与」のクチコミを見ると、フラットな評価制度や定期的な昇給を評価する声が多い。また、ランクイン企業の多くは待遇面の満足度が非常に高く、福利厚生が手厚いのが特徴だ。たとえば、上位10社を見ると――。
野村総合研究所「毎年必ず昇給する。昇格する場合は、1つ上がるごとに月に3万円の基本給アップとなる。賞与の割合がかなり高く、大体年間で9ヶ月分 の賞与が出る。給与に不満を持つ社員は少ないのではと思う」(本社)
電通「1年ごとの評価会議で決められるランクが基本給に反映されます。賞与は、基本は業績連動です。急にひかれたリモートワークに応じた特別手当なども出るのは、金額さておき臨機応変だなと思います。数年前から新たな評価制度が導入され、若くしてマネ職になる人材も登場しています」(営業職)
P&Gジャパン「賞与、昇給、手当、福利厚生は素晴らしく整っております。結果を残せばキチンと評価をしていただき給与という形で表されます。そこがとても嬉しくもあり、成績表のようなものです。自分でも頑張ったプロジェクト、そうではなかったプロジェクトよく分かっておりますので自分がみた評価と会社がみた評価はとても比例しており納得いくものでした」(企画)
PwCコンサルティング「待遇差はなく、男性と平等に扱われる。男性も育休や育児関連(お迎え、入園式等)の中抜けや有給取得をする人が多く、お互いの事情を理解した上でカバーし合っているので、女性も出産育児による休暇取得や時短などに負い目を感じることなく働きやすい」(コンサルタント)
野村證券「入社3年目までは年収400万円程度。その後、役職等によって昇給し、営業成績がよければボーナスに反映する。女性でもそれなりに評価されます。以前はとにかく数字ができる社員が評価されていたが、最近はコンプライアンス、部下への教育姿勢などもしっかり評価の対象となってきた」(営業)
アステラス製薬「新卒1?2年でも年収500?600万円はいきます。また営業の場合は家賃手当も手厚く、家賃の9割を負担してくれます。今後は営業手当の 廃止等の懸念はありますが、一般的な会社よりは高水準です。半年に1度上長と相談して目標を定めます。定量定性の両面でフラットに評価してくれていました」(営業)
アップ額大きい企業は「成果主義で年功序列がない」
アップ額の大きい企業のクチコミを見ると、中途入社の場合は「転職で入社したら年収が上がった」「成果主義で年功序列がない」という声がある一方、新卒入社の場合は「職位や入社年次に応じて一気に上がる年代がある」という声があり、入社形態と人事制度によって特徴が分かれているようだ。
たとえば、こんな案配だ。
セールスフォース・ジャパン「前職の日本企業と比べて年収が2倍になりました。基本給に30時間の残業代が含まれています。超えた分を申請することが可能ですが、月間30時間の残業時間を超える場合はあまりありません。経歴、年齢、性別に関わらず、成果を出せば評価されますし、先に昇進できます。昇進と同時にもちろん給料も上がります。評価基準がはっきり設定されているので、社員たちが公平に評価されている感じがします」(エンジニア)
セールスフォース・ジャパン「給与は高め。福利厚生も充実しており、ウェルビーイング(運動やマッサージなど)に使えるお金も毎月一部支給される。その他の福利厚生もさまざまあり、すべてを使いこなすことができれば、かなり手厚い手当になっている。実力を見たきちんとした評価制度。ポジションにもよるが、比較的上のポジションで入ると、役職自体は上がりにくい印象」(カスタマーサクセス)
アマゾンジャパン「基本給に加えてRSU(譲渡制限付株式ユニット)の付与が評価に応じてある。部署によるが、同年代の平均年収は超えてくる。個人ターゲットへの達成率、チームへの貢献度、担当プロジェクトのビジネス貢献度など、自分から仕事を進められたか、来期以降の改善につなげられる動きができたかなど、すべてにおいて数字で表せる結果が出せた人が評価される。ある意味シンプルで風通しがよいと感じる。年功序列は一切ない」(営業)
野村総合研究所「若手のうちは規定通りの階段を上がっていくケースが多い。しかし、新卒入社の場合10年目くらいから、昇格にばらつきが出始める」(テクニカルエンジニア)
トヨタ自動車「基本給は職位によって決まる。職位が上がるとテーブルが一気に引き上がる。賞与はベースに加点され、職位が上がるにつれ加点の割合が大きくなる」(営業)
女性、男性を問わず、働きやすい環境の中で、頑張った人は正当に評価される。そんな企業ばかりのようだ。
調査は、Open Workに投稿された女性社員による会社評価レポートのうち、一定数の年収データをもつ497社、3万1314人を対象とした。金額は平均値ではなく、独自のアルゴリズムで各年齢時の年収を推定し、25歳・30歳・35歳・40歳のすべての年齢で推定が可能だった企業からランキングを作成した。(福田和郎)