「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下...どう関わる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE16(後編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE16」では、「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下のケースを取り上げます。

  • 部下の悩みにどう向き合う?(写真はイメージ)
    部下の悩みにどう向き合う?(写真はイメージ)
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雑談で部下との親近感を高める

   <「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下...どう関わる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE16(前編)】(前川孝雄)>の続きです。

   2つ目の「雑談」は、仕事以外の話をすることで、部下との親近感を高める効果があります。みなさんにも、仕事の話しかしなかった人と、ふとしたきっかけで雑談を交わすようになり、グッと親しみが増した経験があることでしょう。

   心理学では、「自己開示」と「好意」には相関性があり、自分のプライバシーをオープンにすれば相手は好意を持ってくれ、好意を持つことで相手も自分の胸の内をオープンにしてくれる効果を生むと考えられています。

   まだ20代前後の若手は、上司が仕事以外の顔を持っていることに思いが及ばず、「ベテランの上司は、なにが楽しくて働いているんだろう」くらいに考えているかもしれません。

   ところが、上司が自分の趣味嗜好や家庭の様子を話すことで、「仕事は厳しいけど、意外に子どもを可愛がっているんだ」「仕事人間に見えたけど、映画も好きなんだ」と、上司にも人間的な側面があることを感じて親近感を抱き、少しずつ本音を明かしてくれるようになるものです。

仕事中の「仕組みづくり」の工夫を

   とはいえ、仕事中の突然の雑談では、部下も身構えるものです。

   そこで、3つ目の「仕事中のインフォーマルコミュニケーションの仕組みづくり」です。ひと昔前だと、仕事外の場でインフォーマルコミュニケーションをとろうと、飲み会やランチ会で...と考えましたが、今では必ずしも歓迎されません。

   そこで、私の経営する会社でも日頃実施している「チェックイン」という方法がお勧めです。

   打ち合わせや会議に入る前に、「週末は何をして過ごしたか」「最近の嬉しかった出来事」など、仕事を離れたテーマで一人ひとりが1~2分の雑談を語り合うのです。お互いの興味や関心、考え方を知ることができるのはもちろん、場の空気が和み、意見が活発に出るようになる効果があります。

   いずれにしても、コミュニケーション密度が高いほど、親近感や信頼関係を醸成するための共通認識が増えていきます。上司・部下関係は、組織図やルールではなくコミュニケーション密度で作られていくのです。

手軽にできて効果的! 「職場内ブラブラ散歩」のススメ

   また、上司が忙しい職場や、フロアが広い職場でのお勧めが「職場内ブラブラ散歩」。

   たまたま少し手が空いた時や、就業前や退社前などに少し時間をとり、職場内をブラブラ歩き回り、部下に「今、どの仕事をやっているの?」「調子はどう?」と声をかけるのです。

   「なぜ上司の自分からわざわざ」と思うかもしれませんが、部下にとっては多忙な上司に声をかけるのはかなり勇気がいるもの。そこで、あなたのほうから「今は雑談する余裕があるぞ」という合図を送り、部下が話しやすい空気をつくるのです。

   上司から近づいて声をかけることで、部下は「話を聴く姿勢をもってくれる」「自分の位置まで降りてきてくれる」親しみやすい上司だと感じ、何かと相談しやすくなるのです。加えて、実際に部下のちょっとした不安や悩みを把握でき、早期の問題解決やトラブル回避にもつながります。

   1日わずか5分か10分、行動を変えるだけ。やる気にさえなればすぐに始められる方法です。ぜひ実行してみてください。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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