「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下...どう関わる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE16(前編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE 16」では、「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下のケースを取り上げます。

  • 部下の悩みにどう向き合う?(写真はイメージ)
    部下の悩みにどう向き合う?(写真はイメージ)
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「ホントに困っていることはないのか?」

【上司(課長)】Bさ~ん。いま、少しでいいから時間とれるかな。
【部下(Bさん)】あ、はい...。何でしょう。
【上司】いま、何か仕事で困っていることはないかな?
【部下】はあ...。特に、ありませんけれど...。
【上司】ホントか? 遠慮してるんじゃないか? 何でもいいから言ってごらん。
【部下】えっ? でも...、いまのところ大丈夫です。それにしても、急にかしこまって、いったいどうされたんですか?
【上司】まあ、時には部下の悩みにも耳を傾けようと思ってね。でも、特に困ってないなら何よりだ。また何かあったら言ってくれ。
【部下】はあ、そうですね...。そうします。(...どうせ管理職研修で「部下の本音を傾聴しよう」などと習ったんでしょうけど、普段無関心なのに急に言われてもネ...。)

部下は上司に本音を見せない

   あなたは自分が若手だった頃、上司に「何か困りごとや不満はないか?」と聞かれて、正直に本音を話せたでしょうか?

   おそらくほとんどの人が「NO」と答えることでしょう。上司に本音を話すことのできる若手は、なかなかいないものです。上司の心象を悪くするかもしれないし、自分の能力を疑われるようなことは、部下としてはできるだけ口にしたくないからです。

   学校の先生と生徒の関係を考えてみても、よほどの信頼関係がなければ、生徒から先生に本音を明かすことはありません。表面上はいい子を演じながら、友達同士では「先生、ぜんぜんわかってないよね」とカゲで言い合うこともあるものです。

   さらに、CASEのように、普段は上司が部下に無関心に感じられる場合、急に「悩みはないか?」などと聞かれても、部下は答えに困るだけです。部下との心の距離を縮め信頼関係を持ちやすくするためには、普段から部下とのコミュニケーション密度を高めるよう心掛けなければいけません。

   そのためには、部下と接する機会を増やすことですが、それにも仕掛けが必要です。そこで有効なのが、「(1)上司から働きかける」「(2)雑談を大切にする」「(3)仕事中のインフォーマルコミュニケーションの仕組みづくり」の3つです。

第一歩は上司からの働きかけ

   1つ目の「上司からの働きかけ」は、部下とのコミュニケーションの基本です。なかでも若手は、年齢の離れている上司にどう話しかけるべきか、躊躇することが多いものです。新入社員ともなれば、挨拶ひとつするにもドキドキしています。

   そんな時に、上司が「あいさつは部下からするものだ」という態度で知らんぷりを決め込んでいると、部下は自分が無視されているかのように感じ、必要以上に委縮し、心を閉ざしてしまいます。「あいさつは部下から」という上司の気持ちもわかりますが、小さなこだわりは捨てましょう。

   出社時には上司から声をかけて、上司が部下とのコミュニケーションを受け入れるベースをつくりましょう。あいさつ程度の些細な行き違いが、上司と部下との間に溝をつくっていることもあるのです。

   では、残りの2つの仕掛け「(2)雑談を大切にする」「(3)仕事中のインフォーマルコミュニケーションの仕組みづくり」をどう進めるか――。<「大丈夫です」。心配して尋ねても、悩みを話そうとしない部下...どう関わる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE16(後編)】(前川孝雄)>で解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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