暗号資産取引所のFTXの破産が影を落とす暗号資産市場――。北海道大学の花野直樹さんは、「ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)のチャートを見ると、大きく下落した後は上げたり下げたりと、方向感のないレンジ相場になっています」とコメントし、様子見のかまえ。一方、明治大学の城正人さんは、FTXの破産が今後の仮想通貨市場に与える影響について考察。前回に続き、解説記事をお届けする。
最後の最後で大損!(北海道大学 花野直樹)
今週はトレードに関してはノーポジでした。先週は学業の方が忙しかったため記事が書けませんでしたが、この2週間で相場が大きく動いたため、その振り返りをしていきたいと思います。
まずこの2週間で最も大きかったニュースはFTXの破綻だったと思います。
いまさら解説する必要もないかもしれませんが、簡単に解説すると、FTXグループのトレーディング会社であるアラメダリサーチの財務状況が、自社で発行したトークンであるFTTがほとんどを占めていてほぼ空箱であったのに加え、それを担保にレバレッジをかけた運用をしていたのと、顧客資産にまで手をつけていたなどのことが明るみに出たことで、FTTが売られ暴落しました。
ではビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)のチャートを見てみると、FTX破産のニュースを受けて、大きく下落した後は上げたり下げたりと、方向感のないレンジ相場になっています。大きな流れは下落だと思いますが、時折大きく上に振るなどと、ボラティリティ(価格変動率)が非常に高くなっています。大きなイベント後のボラティリティの大きい方向感のない相場で動く必要は全くないと感じています。
◆今後の戦略は?
では今後の売買戦略をどのようにするかという問題ですが、自分は現在下落前に買ったポルカドット(DOT)のポジションを握ってしまっています。
よくない考えなのですが、損切りするタイミングを失って、ここまで握ってしまったので11月10日の安値(今年の安値とほぼ同値)を割るまで持ち続けようかな、と考えています。
今回の反省点としては、10月後半の段階でかなり強気に相場を見ていて、まだまだ上昇していくと考えていたため、1時間足200MAを基準にトレンドを判断する自分のルールを破ってしまったこと。それと、本当に初歩的なミスで恥ずかしいのですが、逆指値を入れ忘れたことでした。
ルールを守るということは、トレードをやるうえで、耳にタコができるほど聞く話ですが、いまだにそれができず、まだまだ精進しなきゃいけないと強く感じました。
トレードバトルはあと1週間になりますが、反省なども含め最後まで精進したいと思います。
保有
6DOT 10月26日1DOT930円で買いエントリー
前週からの損益=マイナス1374円
11月18日現在=8917円
◆池田昇太のワンポイントアドバイス
ビットコインのチャートを見ると、11月24日の段階では、一定の値幅を行き来していますね。レンジ相場と判断するなら、この後高値圏で反発し、下落していく可能性があります。
また、今回のFTX騒動による相場の停滞が、いつまで続くのかが気になるところでしょう。コインチェックの事件を参考に考えるなら、何もきっかけがなければ、2年近くは低価格で推移するのかもしれません。
よくトレードではマインドセットの重要性が語られることが多いですが、実際に行動に移すのはなかなか難しいですよね。FXなどにも当てはまる内容ですが、あらかじめ利益確定・損切りラインを決めておき、新規注文と一緒に決済注文も入れておくのがベターかと思われます。
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
FTXの余波はどこへ(明治大学 城正人さん)
前回の記事では突如発生した「FTXの破産、その原因」について解説しました。
今回は、FTXの破産が今後の仮想通貨市場に与える影響について取り上げます。
◆今後の市場に与える影響
●1. 仮想通貨の評判自体の悪化
まず、今後の市場に与える影響として、「仮想通貨自体の評価が落ちる」という点があります。世界中で有名だった取引所が破産する。そのショックは計りしれないでしょう。
もちろん今回の騒動は、「自社発行トークンによる不適切な資産の運用」。これに尽きると考えます。したがって、仮想通貨の技術そのものにケチがつく事態ではありませんが、やはり多くの人の感想としては「ほら、仮想通貨なんてろくなもんじゃない」といったものがほとんどでしょう。
こうした事態を避けるためには、株式市場のような規制、取引所のガバナンス向上は避けられないようにも思います。
●2. CEXからDEXへの転換
先ほど「取引所のガバナンス向上が必要」と書きましたが、国家の規制を避ける仮想通貨は規制によらずとも、自律的に資産を管理することも可能。そして、その形態の取引所は、今回の件では全く影響を受けることなく、正常に稼働しています。
仮想通貨取引はCEXとDEXの2つに分かれます。
CEXはCoincheck(コインチェック)やバイナンスのような中央に管理者がいる方式の市場。DEXはUniswap(ユニスワップ)などのブロックチェーン上に展開され、誰からの管理も行われていない方式の市場。
CEXでは圧倒的に安価な手数料、高速な取引を提供する一方で、今回のような取引所運営による持ち逃げのようなリスクを背負っています。
一方、DEXはブロックチェーン上に展開されているため、ブロックチェーンのトランザクション速度以上の速度で取引することはできないうえ、手数料も取引所のものに加え、ブロックチェーン手数料も必要になります。しかし、自律的に人間を介在せず稼働しているので、そもそものプログラムに問題がなければ、持ち逃げリスクは皆無。
これまではやはり早くて安いCEXが多く活用されていましたが、今回のようなリスクが露見したうえ、DYDXのようなL2上に構築された高速、低コスト、高セキュリティを売りにしたDEXの発展から次第にユーザーが移っていくのではないかと考えています。
●3. さまざまなプロジェクトの開発計画中断
有名NFTプロジェクトの資金がFTXに預託されていたため資金がなくなってしまい、開発中断。このように、「直接的に預託者として資金がなくなってしまい開発ができなくなる」ケースに加え、投資を受ける立場として影響を受けるケースが今後大きく現れるでしょう。
秒速3000?6万5000回の超高速な取引が可能という点で注目を集めていたsolana(ソラナ)は、FTXによる巨額の資金提供によって、開発が進められていました。特に、短時間で大量のデータを処理する必要のある「メタバース」「VRゲーム」に強みをもったブロックチェーンとして開発していました。
たとえば、宇宙船のVRゲーム「StarAtlas(スターアトラス)」では2021年のプレセールの際、宇宙船1機あたり数百万円?数千万円という超高額で取引されていました。しかし、どうやらFTXの投資が途絶え、Staratlas開発資金不足に陥りそうだという情報もあります。
このように、FTXはさまざまなプロジェクトに投資していましたから、今後資金不足により開発がストップすることも多々あるでしょう。
ただし、FTXからの投資がなくなった際にも開発を続け、新たな投資家が見つかるようなプロジェクトはむしろ狙い目といえるので、スクリーニングとして活用したいですね!
●今週の取引
なし
前週からの損益=プラス・マイナスゼロ
11月18日現在=1万283円
◆池田昇太のワンポイントアドバイス
FTXは日本でも取引所を構えているだけではなく、世界的にも有名な取引所ですので、事件の影響はとても大きいものと思われます。
コインチェック事件やマウントゴックス事件時も、「仮想通貨って危ないんじゃないか」という声がありましたが、おっしゃる通り仮想通貨の技術的な問題ではなく、人間の取り扱い方が問題です。
また、以前にも「これからはCEXではなくDEX」という意見があり、今回も中央集権的な取引所に対する反対の声は出てくると考えられます。どこまでDEXが普及していくのかは興味深いところですね。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
※取引をお休み(東京大学 迫嵩明さん)
前週からの損益=プラス・マイナスゼロ
11月18日現在=1万円
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆◆アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/