今年(2022年)賃金を引き上げた、または引き上げる予定の企業の割合が約86%となり、昨年(2021年)より5%上回ったことが、厚生労働省が2022年11月22日に発表した「令和4年賃金引上げ等の実態調査」でわかった。
引き上げ幅の平均は月額5534円(年率換算1.9%増)で、消費者物価指数の上昇率(10月は前年同月比3.6%増)に追い付いていない状態だ。
だが、厚生労働省では「まだコロナ前の水準には届いていないが、業績が回復した企業を中心に賃金を引き上げる動きが広まっている」として、「企業業績の回復傾向は続いており、来年に向けてもプラスに働くと見られる」としている。
賃上げ好調な「学術研究、専門・技術」「建設」「医療・福祉」
調査は、全国の従業員100人以上の企業を対象に、毎年7月~8月に行っているもので、今年は2020社が回答した。それによると、定期昇給やベースアップなどで今年賃金を引き上げた、または引き上げると答えた企業は85.7%で、昨年を5%上回った。
賃金を引き上げた企業の割合は、新型コロナの影響もあり、2年連続で前年を下回っていたが、3年ぶりに増加した。平均引き上げ額は5534円で、年率にすると1.9%の上昇となる【図表参照】。
賃金を引き上げる企業を業種別にみると、「学術研究、専門・技術サービス業」(95.7%)が最も多く、次いで「建設業」(95.4%)、「医療・福祉」(95.2%)、「製造業」(94.8%)と続く。
逆に、引き上げる企業が少ないのは、「生活関連サービス業、娯楽業」(67.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」(71.1%)、「運輸業、郵便業」(75.6%)の順。これらの業種は、まだコロナ禍から立ち直っていないようだ。
一方、賃金を引き下げる、または引き下げる予定の企業も0.9%あった。昨年の1.0%に比べると、0.1%減った。業種別でみると、割合が高いのは「学術研究、専門・技術サービス業」(2.7%)、次いで「生活関連サービス業,娯楽業」(2.0%)、「宿泊業、飲食サービス業」(1.6%)と続く。
これらの業種は、賃金引き上げの割合も低い。業種全体を見ると、コロナ禍から回復が進んでいる企業と遅れている企業の明暗が浮き彫りになったかたちだ。(福田和郎)